研究課題/領域番号 |
20221002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安田 一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80270792)
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研究分担者 |
羽角 博康 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (40311641)
小松 幸生 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30371834)
渡辺 豊 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (90333640)
西岡 純 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (90371533)
中塚 武 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (60242880)
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キーワード | 海洋物理学 / 潮汐 / 鉛直混合 / 気候変動 / 海洋長期変動 / 千島列島 / アリューシャン列島 / 海洋大循環 |
研究概要 |
平成23年度には千島・オホーツク海のロシア船ゴルデイエンコ号航海を2011年7-8月に実施することができた。4月には黒潮を横切る乱流観測により黒潮前線での強い乱流と栄養塩輸送を明らかにできた。H22年度に導入したグライダが実海域で使用可能なことを確認し、乱流計を導入しグライダに取り付けた。2011年12月5-7日には、低温研共同利用シンポジウムを代表で開催し、オホーツク海・亜寒帯観測及び関連する研究のとりまとめを行った。シンポジウムの内容は、Progress in Oceanography誌の特集号として出版予定である。千島列島やアリューシャン列島海域における強い鉛直混合の生成機構について、オホーツク海水の主要な流出路であるブッソル海峡では、日周期を持つ地形捕捉波と平均流の重ね合わせで鉛直流速シアが強まる際に強い乱流が中深層に生じることが明らかになった。また、密度の逆転を用いて乱流強度を見積もる手法をブッソル海峡に適用し、乱流強度を定量化し、海峡の前後の層厚の差が説明可能であることを明らかにした。18.6年潮汐混合振動をより現実的に全球的に導入した気候モデルから、観測と整合的な大気海洋の変動がモデル上で現れることが明らかとなった。この変動の主要な要因は千島列島付近の混合変動であり、中緯度大気海洋相互作用によって、さらに強化されていることが明らかとなった。また、アリューシャン列島付近に強い混合を与えることが、北太平洋亜寒帯海域の水塊再現を大きく改善すること、混合を18.6年周期で変動させることにより、観測と整合的な水塊変動が再現されることが明らかとなった。本研究に関連する研究業績により、研究代表者安田が日本海洋学会賞、連携研究者・伊藤幸彦が日本海洋学会岡田賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた観測は成功し、成果も順調に出版されつつある。潮汐変動が気候変動へ与える影響については、新モデルが開発され、この1年で大きな進歩があった。また、新しい観測機器が導入され、当初期待していた以上の成果が上がりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の海洋・気候学に有用な貴重が鉛直混合の直接観測データが蓄積されてきたので、それらを用いた新たな研究展開を図る。また、「潮汐変動による気候長期変動」という新しいパラダイムに確証を与えられるよう、モデルの解析と観測データの解析に研究努力を傾注する。次世代の観測機器である「乱流計グライダ」「CTD乱流計」を実運用できるよう研究努力を続ける。
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