研究概要 |
本研究では、我々が世界に先駆けて開発してきた新しい顕微鏡(高速AFM)を完成させ、その生命科学における有効性・革新性を実証するとともに、細胞にも適用可能な更に革新的な高速AFM(広域走査高速AFM、非接触高速AFM、高速内視AFM)、及び、これらの装置の基盤となるTip走査型高速AFMを開発することを目指している。 (1)精製した生体分子の動的プロセスを観察する高速AFMは完成し、この装置を使って種々のタンパク質の動的プロセスの観察を行っている。本年度には、これらの観察結果の一部を論文で発表した(回転軸のないF1-ATPaseの構造変化の伝搬とCellulaseのCellulose分解反応の研究成果は両方ともScience誌に発表)。 (2)細胞のように大きい試料を観察するに必要な広範囲走査可能なスキャナと振動のアクティブダンピング技術の開発をほぼ完成させた。XY方向に最大43μm走査可能である。これにより、生きた細胞(神経・Hela・Bacillus細胞),のダイナミックな形状変化を高解像で撮影することに成功した。更には、バクテリア細胞観察後にその局所をイメージングし、細胞膜表面にあるタンパク質分子(Porinと同定)のダイナミクスの観察にも成功した。 (3)蛍光顕微鏡に搭載可能なTip-走査方式の高速AFMについては、新たに設計・試作し直し、これまで問題であった振動の問題を解決できた。 (4)非接触高速イメージング可能であると去年度実証した溶液振動高速AFMの空間分可能を向上させるためにカンチレバーの形状を種々検討した。 (5)表面下構造(試料内部の構造)を観察可能とする超音波を利用した新しい原理の検討を行った。試料中を伝搬してきた超音波の検出を確実にするために、超音波発射後に遅れて現れる超音波のみを検出する方法の開発に着手した。
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