研究課題/領域番号 |
20221007
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
高柳 英明 東京理科大学, 総合研究機構, 教授 (70393725)
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研究分担者 |
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物理系, 准教授 (90271527)
柏谷 聡 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (40356770)
津村 公平 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, ポスドク研究員 (70583251)
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キーワード | 超伝導 / 量子ドット / ナノ光デバイス / ナノ電子デバイス / 量子情報 / スピントロニクス / 量子エレクトロニクス / ナノプローブ |
研究概要 |
第一にスクイッド近傍に埋め込まれた量子ドット等に光子照射を行うための希釈冷凍機強磁場中走査近接場顕微鏡(SNOM)を用いた手法の開発を実施した。開発されたSNOMの性能評価のため、二次元電子系端状態のマッピングを行い、試料温度200mK、空間分解能100nmの性能が得られた。スクイッド近傍に埋め込まれた単一量子ドットの光子照射のために十分な性能が達せられた。Nbナノスクイッドを用いた走査型ナノスクイッドのためのドライエッチングによるSiプローブを作製した。 また、微小超伝導体の局所磁束状態を検出するための、弱結合型ナノスクイッドの開発を行い、弱結合部の構造の構造と磁場変調との対応をシステマティックに計測した。その結果、弱結合部の実効接合長をより短くすることにより、より変調度が増加し、30%程度の変調度を有するナノスクイッドの作成に成功した。また、ab面内の切片を有するNb/Sr2RuO4のSQUIDを開発するための基礎技術として、Au/Sr2RuO4接合およびNb/Sr2RuO4のジョセフソン接合の作成に成功し、SQUID開発のための準備を整えた。 また、超伝導/量子ドット/超伝導接合(QD接合)を用いたdc-SQUID(QD-SQUID)による光励起スピンの観測に向けた実験についてはQD接合部にのみ光を照射できるようにマスクをつけたSQURDを作製し希釈冷凍機温度において光照射実験を行った。光照射がQD-SQUIDの電気伝導に大きな影響を与えることを確認したが、光の偏光状態による差異は見られず、今のところ単一スピンの観測には成功していない。これは基板の表面準位の影響が大きいと考えられ今後は表面準位の影響とドット内に励起された電子の影響とを切り分けた実験を行っていく予定である。 SIS-SQUIDによる量子ドットのスピンのアンサンブル平均の観測に向けた実験では、まず量子ドット基板を表面に量子ドットが露出したものからギャップ層を伴った埋め込み型の量子ドット基板に変更を行った、これは埋め込み型量子ドットの方が光励起スピンの緩和時間をより長くすることが出来るためで、スピン観測とその制御により適しているためである。スピン観測とその制御のためSQUIDと顕微PL測定を組み合わせた計測が可能なサンプルを作製し実験を行った。 Sr2RuO4のジョセフソン接合を用いた非S波超伝導によるSRO-SQUIDについてはP波超伝導内の超伝導対称性の相転移を反映したπSQUID状態からO-SQUID1状態の転移を観測した。またSROに半整数量子渦がトラップされたと考えられ
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、希釈冷凍機強磁場中走査近接場顕微鏡(SNOM)の開発に成功し空間分解能が100nm程度まで上げることが出来、さらに局所磁場の直接観測のために走査型ナノスクイッド顕微鏡の開発を進め、プローブとその上に設置するNbナノスクイッドをの最適化が成功した。量子ドット中の光励起スピンに関してはQD-SQU工Dにおける電子輸送に表面準位の強い影響があることを明らかにし、これを切り分ける必要があることを示した。従来型のスクイッドによる量子ドットスピンの観測のために顕微PL法とナノスクイッドを組み合わせた測定を開始し、これを進めている。さらに非s波超伝導を用いたナノスクイッドの開発ではSr_2RuO_4がカイラル超伝導であることを示す0スクイッドとπスクイッドの転移を発見した。
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今後の研究の推進方策 |
量子ドットスピンの観測のためには表面準位の影響を切り離す必要がある。このためには一つは埋め込み型量子ドット基板を使い励起子の状態をゲート制御することでスピン緩和を押さえ、アルミトンネル接合やニオブ弱接合を使ったナノスクイッドによって計測する。量子ドットスクイッドに付いてはシングルスピンの緩和時間と表面準位による緩和時間の差による切り分けを目指し、時間分解測定などを行っていく。
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