研究課題/領域番号 |
20223001
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
岡田 章 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90152298)
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研究分担者 |
西村 和雄 京都大学, 経済研究所, 研究員 (60145654)
今井 晴雄 京都大学, 経済研究所, 教授 (10144396)
蓼沼 宏一 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50227112)
梶井 厚志 京都大学, 経済研究所, 教授 (80282325)
古澤 泰治 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (80272095)
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キーワード | 経済理論 / ゲーム理論 / 市場 / 情報 / 政治経済学 / インセンティブ / 交渉理論 / 繰り返しゲーム |
研究概要 |
平成23年度の三つの研究班の研究実績は、次の通りである。 (i)市場の動学・非完備情報ゲーム分析(西村、梶井、原) あいまいなネットワーク構造の観点から協力ゲームのMyerson値の公理的特性を明らかにした。pari-mutuel市場での不完全な情報に基づく価格形成バイアス現象を進化ゲーム理論的に説明した。市場での複数の経済主体の主観的時間割引率の異質性が高まると、代表的主体はPrelec(1994)の意味で、より時間非整合的となることを示し、観的時間割引率の異質性の度合いがその分布のキュムラント母関数の曲率で測定可能であることを証明した。 (ii)組織・情報・インセンティブのゲーム分析(今井、関口、尾山) 気候変動に関する現実の国際交渉に基づく動学交渉モデルを定式化し、途上国が京都議定書の枠組みによって利益を得る可能性と損失を被る可能性の両方があり得ることを例証した。相手の行動を観測するかどうかを無費用で選べる繰り返しゲームモデルにおいて外生的な情報の役割を分析し、情報の質が低い方が協調可能命題やフォーク定理の成立が容易になることを示した。ネットワーク上のバイリンガルゲームで戦略が伝播するための必要十分条件を導いた。 (iii)政治経済学のゲーム分析(岡田、蓼沼、古澤) 提携交渉理論と繰り返しゲーム理論との融合を試み、繰り返しゲームにおける再交渉防止均衡を交渉理論の視点から再検討した。個人が消費ベクトルだけでなく選択機会の集合にも選好をもつ場合に厚生経済学の基本定理が成立するための条件を明らかにした。オークション理論を用いて海外からの直接投資の誘致競争について分析し、誘致の対象となる企業が、誘致合戦に参加している国や地域の人々に部分的に所有されているならば、誘致に成功した国や地域は損失を被る可能性があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
三つの研究組織の研究は、いずれも交付申請書の研究計画を達成し、国際的に評価の高い学術雑誌に研究成果論文を掲載することができた。研究組織間の研究交流を緊密に行い、それぞれの研究に対して他の研究組織のメンバーが助言もしくは分析上のサポートを行うことにより、研究プロジェクトの研究はバランスよく進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、人間行動を基礎とした市場、組織、社会の相互連関を通したさまざまな競争と協力のメカニズムを研究してきたが、さらに不確実性下の人間行動の意思決定理論的基礎、組織内の集団決定過程の動学的基礎、協力行動のミクロ的基礎および政治経済システムの厚生評価の理論的基礎を強化し、「人間社会における競争と協力のメカニズムを解明する総合科学」へと発展させることが有望となった。このため、競争と協力の総合科学の創造を目指して研究組織を拡大し研究を発展させる。
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