研究概要 |
平成21年度、本研究では大きく4つの研究を行った。 第一に、日本全国に在住する50歳以上85歳未満の男女9,000人を対象に「中高年の生活実態に関する全国調査」を2010年8月に実施した。回収数は6,448ケース(回収率71.6%)、そのうち男性3,080人、女性3,368人であった。現在論理チェックをはじめとするデータクリーニングを行っているが、回答状況は良好で親子間での支援の授受状況など、これからの少子高齢社会での自助、共助の実態を捉える上に貴重な基礎データである。さらに、2010年6、7月に全国の20歳以上男女を対象に「社会保障に関する意識調査」を実施した(有効票:男性1,162人、女性1,374人)。これについても分析を開始している。 第二に、厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」1986年から2007年の長期データを分析した。その結果は、『国民生活基礎調査基礎集計』(白波瀬佐和子・竹内俊子)としてまとめた。特に、所得、貯蓄、支出格差を世帯構造の変動に着目して検討し、再分配効果についても検討を進めた。 第三に、米国イェール大学にて、国際ワークショップ"Searching for the New Wave of Japanese Studies in Social Sciences"を開いた。イェール大学のWilliam Kelly教授とKaren Nakamura助教授と、本プロジェクトから盛山和夫教授も加わって、これからの社会科学における日本研究のあり方について活発な議論が行われた。特に、少子高齢化という東アジアにも共通する急激な人口変動はこれからの日本研究を考える上にも重要な分析軸となることが指摘された。 第四に、Young-Mi Kim氏と日本・韓国・台湾の労働市場での男女格差の分析を進め,"Understanding Differences in the Gender Earnings Gap in East Asia:Effects of State Policies, Skill Specificity, and Wage Structure"として草稿をまとめた。これにさらなる修正を加えて、学会報告と学術雑誌への投稿準備を進めている。
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