研究課題/領域番号 |
20224007
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大門 寛 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (20126121)
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研究分担者 |
松井 文彦 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (60324977)
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キーワード | 放射線、X線、粒子線 / 表面・界面物性 / 物性実験 / 電子顕微鏡 / 計測工学 |
研究概要 |
本研究計画では、新しく発明してJST-CRESTで5年間開発してきた立体光電子顕微鏡StereoPEEMや、その過程で新しく発明された楕円メッシュ二次元分析器を完成して、顕微鏡機能を使って試料の拡大像を観測し、微小領域だけからの二次元光電子分光を行ない、微小領域の電子状態と原子構造を立体的に観測することを目的としている。 昨年度までに、真空槽、レンズ、マニピュレータなどの整備が終わっており、楕円メッシュ二次元分析器としての形が一応完成していた。実験室での電子銃を励起源に用いての試料の拡大像の取得に成功した。装置を放射光施設(SPring-8)に運び込み、放射光を励起光として実験を行った。光電子分光のピーク幅から全分解能を見積もり、0.2%という高い値を確認することができた。試料の拡大像も25ミクロンの分解能で得ることができた。角度分布は、専用の測定ジグを設計製作し、テストを行い、±45度までの角度分布がきれいに測定できた。単結晶Si(111)面からのSi2p光電子回折パターンの取得に成功した。 平成23年度においては、テストデータから一歩進んだ実際の試料を用いた測定を行うことを目的として研究を進めた。微小領域の結晶構造が解析できるという特徴を確認するため、太陽電池の省コストに貢献する多結晶Si基板の観測を試みた。30ミクロン位のサイズの微結晶の集まりのそれぞれの微結晶からの光電子回折パターンの測定に成功した。また、100ミクロン程度の微小試料であるグラフェンからの光電子回折パターンの測定にも成功した。これまで大きな単結晶試料でのみ観測できていた光電子回折パターンを、微結晶のそれぞれから得られたことは、本装置の基本的な性能が確認できていることを示しており、計画の主要部分が成功していると言える。また、グラファイトからの3次元価電子帯の観測にも成功した。今後は、拡大像とリンクした微結晶の結晶方位の観測、立体原子写真の観測、使いやすいソフトの開発、等が残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新しく発明してJST-CRESTで5年間開発してきた立体光電子顕微鏡StereoPEEMや、その過程で新しく発明された楕円メッシュ二次元分析器を完成して、(1)顕微鏡機能を使って試料の拡大像を観測し、(2)微小領域だけからの二次元光電子分光を行ない、(3)微小領域の電子状態と原子構造を立体的に観測することを目的としていた。上記「概要」に記したように、既に(1)の顕微鏡機能による試料の拡大像の観測に成功し、(2)微小領域だけからの二次元光電子分光に成功している。(3)微小領域の電子状態の観測にも成功した。原子構造を立体的に観測するためには、世界最先端の可変偏光ビームラインがその本来の性能を出す必要があるが、光源の調整が終わっていないために円偏光があまり使えないという状況になっている。本年度にはある程度の成果が出るものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ほぼ完成した楕円メッシュ二次元分析器を用いて、微小領域の電子状態と原子構造を立体的に観測し、計画を完成することを目指す。世界最先端の可変偏光ビームラインであるSPring-8のBLO7LSUに装置を設置しており、光源の調整の進展により円偏光と直線偏光放射光を用い、原子配列の立体写真や、価電子帯の軌道の対称性までの情報を持つ3次元エネルギーバンドの測定を行う。光源の調整が間に合わずに円偏光や直線偏光が十分に使えない時には、2次元パターンからホログラフィーの手法で3次元構造を得ることについても推進する。
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