研究概要 |
2008(平成20)年度は、南部フォッサマグナから糸魚川静岡構造線、南一中央アルプスを越えて木曽谷に至る約90kmの測線にそって深部構造解明のための地震探査をおこなった。具体的には、平均50m間隔で設定された約1700の受振点(1点あたり平均9個の地震計)に総数10,000を越える地震計を設置し、大型バイブレータ4台による平均1km間隔の集中発振、山岳部における3発のダイナマイト発振をおこなうという空前の規模で探査は敢行されたのである。この探査は、地元の信州大学、静岡大学、岐阜大学の全面的な支援があることによって可能となったことを特に記しておきたい。探査の結果、ノイズレベルの非常に低い極めて良質の膨大なデータが取得され、処理と解析を継続中であるが、現在までに明らかになった地下構造は概ね以下の点にまとめられる。(1)中央構造線より東側の外帯においては地表では東傾斜(太平洋側傾斜)の逆転構造が観察されるが、深部では西南日本同様に西傾斜(大陸側傾斜)である。(2)西側の内帯の上部地殻は西南日本と同様に水平な構造が卓越しており、おそらく伊那谷断層群は地下10km程度にある水平なデタッチメントから派生していると推定される。(3)中央構造線は地表では鉛直であるが、地下深部では西南日本同様に大陸側傾斜と推定される。最終的な処理結果は2009年度に得られるが、それは、日本海拡大一日本列島屈曲時に伴って形成された構造を解明する上で、そしてまた現在の中部日本のテクトニクスを考える上で、極めて重要なデータを提供することとなろう。
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