ナノサイズ磁石と量子スピン格子における、磁石現象と量子現象の"操作"を目的として、"超常磁性の外場応答スイッチ機構の創製"を研究目的とする。近未来の「ナノテクノロジー」技術革命に向けた究極の材料は"個々の分子"である。そして、重要なキーワードの一つが"分子スピン制御"であり、ボトムアップ式分子化学の目指すべき技術が"個々のスピンを信号として認識(制御)する"ことである。この研究目的を達成するために、まずダブルデッカー型ランタニドフタロシアニン錯体を用いた。これは、単分子量子磁石的挙動を示す。これをAu(111)基盤上に真空蒸着して走査型トンネル顕微鏡(STM)で1分子を観測することに成功した。スピン偏極STMを用いて1個の分子に"上向きスピン"、"下向きスピン"を書き込み、読み取ることができれば究極の単分子メモリーとして働く。現在、進行中である。この1個の分子をSTSで観察することにより、"近藤効果"を観測することに成功した。この場合、金属伝導はSTMのトンネル電流に対応し、磁性不純物は単分子磁石である。近藤効果は単分子磁石で観測されたのは初めての例である。これらの錯体を用いて電解トランジスターを作成し、動作を確認した。Tb錯体はp型タイプであるのに対して、Dy錯体はp型とn型の両方を示すAmbipolar(両極性)的挙動をした。この違いは基底状態と第一歴状態のエネルギー差の違いによりうまく説明することができた。
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