研究課題/領域番号 |
20225003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山下 正廣 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60167707)
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研究分担者 |
宮坂 等 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (50332937)
伊藤 翼 東北大学, 大学院・理学研究科, 名誉教授 (90007328)
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キーワード | 単分子量子磁石 / 単一次元鎖量子磁石 / 量子トンネル現象 / 電界トランジスター / STM / STS / 近藤効果 / 磁気抵抗 |
研究概要 |
超常磁性体とは非常に遅い磁化緩和を示すものであり、その中でも我々が研究対象としているのは「単分子量子磁石」と「単一次元鎖量子磁石」である。これらの物性や機能性を外場(光、圧力、温度など)により制御することが研究の目的である。まず、単分子量子磁石であるPc2TbとPc2Dyの電界トランジスターデバイスを作成して測定した所、前者はp型であるが、後者はアンバイポーラー(両極性)であった。この違いは基底状態と第一励起準位のギャップの大きさの違いによりうまく説明が出来た。次に単分子メモリーの実現を目指して、Pc2Tbを金基板上に真空蒸着をした。極低温で走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて観測した所、Pc2Tbの8個のローブ(葉)が明確に観測された。次に走査型トンネルスペクトル(STS)で中心型外側に向かって測定すると、外側の部分でフェルミレベルに「近藤ピーク」を観測した。近藤ピークは金属が少量の磁性不純物を含んでいるときに、低温になるにつれて金属電流と磁性スピンがシングレットを作って、半導体になる現象である。今回のスペクトルにおいて、金属電流はSTSのトンネル電流であり、磁性不純物はPc上のπラジカルである。単分子量子磁石における近藤効果の観測は初めての例である。Pc2Tbをアルコール中で電界酸化すると一次元鎖構造を持つ高伝導性の新規単分子量子磁石を単結晶で得ることが出来た。また、10Kでヒステリシスを観測したがこれは単分子量子磁石の中で最も高い温度である。この化合物の磁気抵抗を測定すると、10K以上では通常の正の磁気抵抗であるが、8K以下では負の磁気抵抗を示した。これは始めての負の磁気抵抗である。しかしながら、その大きさは-2%程度であり、非常に弱い。これは、f-π相互作用が弱いためである。
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