研究課題/領域番号 |
20225003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山下 正廣 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60167707)
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キーワード | 単分子量子磁石 / 近藤ピーク / 単分子メモリー / ダブルデッカー錯体 / 走査型トンネル顕微鏡 / 走査型トンネルスペクトロスコピー |
研究概要 |
超常磁性化合物とは、緩い磁化緩和を示す分子性量子磁石のことであるが、ダブルデッカー型フタロシアニンPc2Tb単分子磁石をAu(111)基盤上に高温で真空蒸着させると、アイランドに明暗のパターンが観測される。明部分に電子注入を行なうと暗に変わり、暗に電子注入を行なうと明に変わる。この変化は可逆的である。DFT計算の結果、明部分は上と下のフタロシアニンが45°ズレているのに対して、暗部分は上と下のフタロシアニンが30°にズレが小さくなっていた。明部分では「近藤ピーク」が観測されるのに対して、暗部分では「近藤ピーク」が観測されなかった。「近藤ピーク」を1個のメモリーと考えるならば、単分子メモリーを実現したことになる。次にAu(111)基盤上にPc2Yの炭層膜を蒸着させ、その後Cs原子を飛ばしてPc2Y上に乗せる。Cs原子が乗ったPc2Y上ではCsのs電子とPc2Yの配位子のフタロシアニン上のπラジカルがカップリングしてシングレットを作るために、「近藤ピーク」は観測されないが、Cs原子を電子注入してマニュピレーションして飛ばすと、カップリングが溶けて、πラジカルが再び現れて、「近藤ピーク」が観測される。ヘテロダブルデッカー(フタロシアニン-ナフタロシアニン)Tb(III)単分子磁石を新たに合成した。ヒステリシスは10K以上でも観測され、世界で最高の温度を示した。この分子をAu(111)上に真空蒸着すると、フタロシアニンが上側にあるものと、ナフタロシアニンが上側にあるものがストライプをなして縞上に並んでいた。これらの近藤温度を観測すると、ナフタロシアニンが上側にある場合には50Kであったが、フタロシアニンが上側にある場合は30Kであり、この違いから、ナフタロシアニンが表であり、フタロシアニンが裏である。このように分子に表と裏があると言う新しい概念を見つけることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヘテロダブルデッカー(フタロシアニン-ナフタロシアニン)Tb(III)_単分子量子磁石の合成に成功した。この化合物は10K以上で磁化にヒステリシスを示し、単分子量子磁石の中では世界最高のヒステリシス温度である。この分子はヘテロな配位子を持つために、Au(111)基盤上に真空蒸着をすると上側がフタロシアニンの場合とナフタロシアニンの場合が交互に縞上に配列している。近藤温度を測定した結果、ナフタロシアニンの方が、近藤温度が高いために表であり、フタロシアニンが裏である。このように分子に表と裏があると言う新しい概念を確立することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
1)Au(111)基盤上にPc2Tb単分子量子磁石を真空蒸着をして、スピン偏極STMを用いて、1個の単分子量子磁石にアクセスして、上向きスピンと下向きスピンを書き込む。それをまた読みこむ。このことにより単分子メモリーを実現する。 2)より高温のブロッキング温度を持つ単分子量子磁石をえるために、フタロシアニンのπ系を拡張した配位子を用いてダブルデッカー型単分子量子磁石を合成する。
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