研究課題
本研究では、遷移金属錯体を触媒とするクロスカップリング及び多成分カップリング反応の開発を目指しており、本年度は下記の触媒反応系について重点的に検討した。(1)ニッケル触媒を用いるクロスカップリング反応の反応機構の詳細を解明するため、理論計算により各反応中間体および遷移状態の構造とエネルギーを求めた。種々のジアリル配位子について計算を行い、理想的な配位子構造に関するデータを蓄積し、触媒反応の効率化を目指して実験化学的にフィードバックできる重要な結果を得た。また、少量のNiおよびPdを含む金属酸化物ペロブスカイトをNiおよびPdの供給源として用いるクロスカップリング触媒計を開発し、低濃度の触媒でも効率よく反応が進行することを明らかにした。また、溶出したNi触媒のTONは10000000近くに達することを示した。(2)アルキル基を導入する多成分カップリング反応としては、銀触媒を用いるアルキン類へのアルキルハライドを伴う、ビニルグリニャール試薬の簡便な合成法を開発した。本法を用いると、末端アルキンとアルキルはライド及びアルキルグリニャール試薬から温和な条件下でビニルグリニャール試薬を調整することが可能で有り、本法で生成させたビニルグリニャール試薬がアリールハライドとのクロスカップリング反応に支障なく利用できることを示した。(3)アルキル基を導入する多成分カップリング反応として、パラジウム触媒を用いる事により、アルキンに硫黄官能基とイミド基を付加させる触媒系を開発した。この反応はCF3を導入する手法としても有用であることを示した。また、パラジウム触媒を用いる事により、アルキンへの一酸化炭素によるカルボニル化を伴ったフェノールの付加反応を開発した。
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