研究課題/領域番号 |
20225007
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤木 和夫 京都大学, 工学研究科, 教授 (20150964)
|
研究分担者 |
高 文柱 京都大学, 工学研究科, 助教 (80553966)
|
キーワード | キラル液晶場 / 共役ポリマー / ヘリカル構造 / 高次構造 / 光応答性 / 軸不斉キラル化合物 / らせん制御 / キラル反転 |
研究概要 |
温度によりキラリティーの反転が可能で、かつこれまでにない高温領域でキラルネマチック液晶(N^*-LC)相を保持する新規のN^*-LCを調製した。これをクロスカップリング共重合反応の不斉液晶場として用いることで、らせん状芳香族共役系コポリマー[ポリビチエニレン-フェニレン、PBTP]を合成することに成功した。具体的な成果は次のとおりである。 (1)フェニルシクロヘキサン(PCH)誘導体であるPCH302とPCH304の等モル混合ネマチック液晶(N-LC)に、高温においてもN相を示し、かつ極性を有するエステル型液晶(PCH3E02)を加えて、広い温度範囲(42℃-200℃)でN相を示す母液晶を調製した。(2)この母液晶に、モノマーであるビチエニレン誘導体とフェニレン誘導体、二種類のキラルドーパント[不斉中心型のキラル化合物(S)-PCH308^*、および軸不斉と不斉中心を有するダブルキラル型化合物(S)-DCB]、さらに重合触媒のパラジウム錯体[Pd(TPP)_4]を加えることで、温度によりらせん制御可能なN^*-LCを調製した。(3)接触試験および光学観察により、このN^*-LCは低温では左巻き、高温では右巻きのらせん構造を有することを確認した。(4)次に、低温(70℃)および高温(110℃)にてStilleクロスカップリング反応を行い、ポリマー(PBTP)を合成した。(5)PBTPポリマーは、低温および高温領域でそれぞれ負および正のコットン効果(Cotton effect)を示した。このコットン効果はバイシグネート(bisignate)であることを確認し、これにより、ポリマー鎖間にヘリカルπ-スタッキングによるらせん構造が形成され、そのらせんの向きは重合温度により制御可能であることが明らかになった。 以上により、温度によりキラリティーが制御可能な不斉液晶反応場の適用性を拡大することで、ヘリカルポリアセチレンなどの脂肪族共役系ポリマーのみならず、芳香族共役系コポリマーのらせん構造をも制御できることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究において、温度によりキラリティーが制御可能な不斉液晶反応場を構築して、ヘリカルポリアセチレンやらせん状芳香族共役系コポリマーの合成と、そのらせん構造の温度制御を可能としてきた。さらに、光により可逆的にらせん反転するキラルネマチック液晶を開発し、これを不斉反応場としてクロスカップリング重合を行い、らせん状芳香族共役系ポリマーを合成することに成功した。また、不斉液晶反応場をフリーラジカル重合に適用し、非共役系ポリマーへのらせん誘起に初めて成功した。このように、当初の計画以上の進展と成果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
温度や光によりらせん反転する不斉液晶場を、化学重合のみならず電気化学重合にも適用し、共役系ポリマー(例えば、らせん状ポリエチレンジオキシチオフェン)や非共役ポリマー(例えば、ポリメタクリレート誘導体)におけるらせん構造の構築を実現する。本不斉液晶場の汎用性と適用性をさらに高めるべく、研究を推進する。
|