フォトニック結晶は、光の波長程度の周期的屈折率分布をもつ光ナノ構造体であり、様々な光制御が可能な材料として注目を集めている。研究代表者は、本研究開始前までに、フォトニック結晶工学の発展を目指し、高Q値光ナノ共振器の概念の提唱と実現など、様々な世界をリードする成果を挙げてきた。しかし、これらは、フォトニック結晶自身の性質が時間的に変化しない、静的なもののみを取り扱ってきた。そのため、一旦設計段階で特性を決めると、そのままその特性が決定してしまっていた。ここで、フォトニック結晶自身の性質を時間領域で動的に変化させることができると、光を一瞬の間止めておく、あるいは伝播する光パルスの波長を選択的に変化させるといった、様々なブレークスルーが生まれ、光科学分野のさらなる新しい展開が開けるものと期待される。 本研究では、具体的な研究対象として、A.光ナノ共振器のQ値を時間領域で動的に制御することにより、共振器に光パルスを捕獲、保持、放出するなど、光の伝播を自在に制御すること、B.導波路モードを動的に制御することで、導波路を伝播する光パルスの波長(周波数)など、光パルスそのものの性質や振る舞いを動的に変化させること、の2点を設定し、フォトニック結晶の動的制御と新機能の創出、さらには新しい学問領域「フォトニック結晶ダイナミクス」の構築を目指す。
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