研究課題/領域番号 |
20226007
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大西 公平 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80137984)
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研究分担者 |
森川 康英 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90124958)
小澤 壮治 東海大学, 医学部, 教授 (10169287)
大石 潔 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (40185187)
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キーワード | 人間支援基礎理工学 / ハプティックアクチュエータ / 実時間ハプティクス / 触覚伝達 / 多自由度触覚システム / ロボットハンド / モード変換 / マルチラテラルシステム |
研究概要 |
少子高齢化をはじめ、多くの課題を抱える現在の社会において、持続可能性の確保には産業構造の改変が必要不可欠である。具体的には、標準化技術からの脱却と、個人の行為そのものを支援する産業技術の発展が必要である。特に、力覚・触覚信号を人工的に再現するハプティクス技術は医療、介護分野を中心に産業化が期待されている。本研究ではこの第三の感覚を伝送、再現、記録する技術を人間支援基盤技術としてとらえて研究開発を行っており、本年度は以下のような研究成果を得た。 1.すべてのモーションコントロールが理想位置(速度)制御と理想力制御、及びこの二つを機能空間に写像する一般化座標変換の三つで表現できるという基本構造を明らかにした。また、本理論を医療用鉗子ロボットに適用し、力覚・触覚信号の増幅に成功した。 2.座標変換の際に支配的となる特徴軸について主成分分析に基づく導出方法を示した。これにより、理想位置制御と理想力制御の組み合わせにより人間動作の記述が可能になった。 3.ハプティクス技術により得られる触覚信号とカメラにより得られる視覚信号との統合に成功した。これにより、動的に変化する環境に対して自律的に適応した動作を行うことが可能になった。 4.フレキシブルアクチュエータを用いた二関節筋機構を備えた2リンクマニピュレータを開発し、ハプティクス技術を生体機構に応用することに成功した。検証実験により、リニアモータ2台を用いて二関節筋の機能が実現可能なことを示した。また、位置制御実験と二関節筋出力比較実験より、高精度な位置追従の実現とモーメントアーム行列による二関節筋出力の調整が実現できることを示した。 5.ハプティクス技術の応用技術としてインプラント手術用歯科ドリルを開発し、豚の顎骨を用いた実験を行った。これにより、ハプティクス技術を用いた環境情報取得技術が実際の生体においても十分な効果を発揮することを示した。 以下に示す学術発表のほかにマスコミ等を通じて研究成果の発信を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すべてのモーションコントロールが理想位置(速度)制御と理想力制御、及びこの二つを機能空間に写像する一般化座標変換の三つで表現できるという基礎原理を体系化でき、その結果、個人の身体機能の拡張延伸が可能となった。さらに、有機的な医工連携によりインプラント手術用歯科ドリルの開発およびin-vitro実験に成功し、本技術の実用性を確認した。以上より、人間本来の感覚に基づいた身体行為支援を実現する理工学的方法が確立され、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は開発した技術を統合し、多自由度ハプティックシステムへの実装を行う。本システムを用い、道具座標系から道具を介さない人間の身体座標系への拡張と、身体座標系における直接動作の実世界ハプティクス実験の推進を行う。また、オンライン・リアルタイムにも適応できるように装置を改良し、in-vivoでの刺入・触診などの人間支援動作における実験検証を行う。得られた実験結果を分析・評価し、本研究課題で開発した人間支援理工学基盤技術の有用性を明らかにする。 五年間の研究期間で得られた総合的な知見を年度末に開催する成果報告会においてまとめて紹介することで、本研究の意義と成果を広く国民と社会に発信する。
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