研究課題/領域番号 |
20226009
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中里 和郎 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90377804)
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研究分担者 |
宇野 重康 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40420369)
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キーワード | バイオ・センサ集積回路 / スマートuTAS / バイオCMOS |
研究概要 |
半導体集積回路チップ上で電気化学計測を2次元・実時間で行う回路として、フェロセン誘導体修飾電極をゲートとするFETを用いた酸化還元電位センサの32x32アレイを試作した。MOSFETの拡張ゲートに金電極を用い、集積回路配線層の腐食を回避するためSU-8を保護膜として用いた。その後、11-FUT(11-フェロセニル-1-ウンデカンチオール)の自己組織化単分子膜を金電極に修飾した。フェロセンにより溶液中の酸化物と還元物の濃度比を酸化還元電位として検出する。電位は化学平衡により定まるため安定な信号が得られる。32x32センサアレイを試作して評価した結果、電位の安定性は直接電荷検出法の30mV/時に対し、0.5mV/時と2桁の向上が得られた。酸化還元電位はネルンストの式に従うことが確かめられ、酸化物と還元物の濃度比に対し6桁のダイナミックレンジを得た。また、1024センサ出力のうち92%が中央値から1mV以内に入ることが確かめられた。残りの8%は顕微鏡による観察から金電極の剥がれによることが判明した。このセンサアレイ上でヘキソシナーゼ法により酵素反応を起こさせ、グルコースを200mg/dLまで2mg/Lの高精度で検出することに成功した。 従来の直接電荷検出法の最大の問題であった安定性・再現性が、酸化還元電位検出法により解決され、dNTPによるDNAプライマ伸長反応を用いた酵素反応により、小型可搬型・遺伝子ベース検査診断システムの見通しを得ることができた。 また、電位検出法と相補的な電流・インピーダンス検出法の回路を設計・試作し、基本データを取得した。これらを基に、多点・マルチモーダルな汎用バイオセンサ集積回路を設計した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度まで直接電荷検出法を用い、検出信号の安定性・再現性に苦労してきたが、今回、酸化還元電位検出法を用いることにより、飛躍的な性能向上を得ることができ、高精度な小型可搬型・遺伝子ベース検査診断システムの実現に対する見通しを得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後、酸化還元電位検出方式によるDNAシーケンサおよび特定DNA検出のシステムを完成させる。 また、血液検査やペプチド検出によるアレルギー体質検査等へ本方式を発展させる。 検査診断システムとして当初の目標を達成する見通しが得られたが、初期のがん発現の発見といった極微の生体分子を検出するにはまだ不十分であり、今後、半導体集積回路による生体1分子検出の研究に発展させる必要がある。
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