従来のプローブ分子を半導体基板に直接固定する方法は、基板の表面状態をプローブが変わるたびに最適化しなければならない、基板の汚染、等の問題が生じた。これを解決する方法として、プローブ分子を直径50umのビーズに固定し、検出に最適化した化学反応を設計し、半導体集積回路で化学反応の結果を検出する方式を新たに開発した。これにより、精度の1桁向上、標準トランジスタの使用による製造コスト2桁低減と安定供給、分子固定ビーズを変えることにより様々な生体分子の検出に対応、チップの再利用可能、等を実現した。 半導体集積回路チップで化学反応を検出する方法として、電位検出、電流検出、インピーダンス検出の電気化学計測回路を設計し、ウエハレベルで試作を行った。電位検出法では、従来の直接電荷検出法では信号が極めて不安定となることから、化学平衡電位を検出する方法に改め、2桁の信号安定性を実現した。この方式に基づき、DNAの伸長反応を酵素反応により酸化・還元物質に変換し、化学平衡電位を検出する方式を新たに提案し、DNAの塩基配列検出の実験に成功した。電流検出では1pAの電流を微小電極アレイにより検出することに成功した。インピーダンス検出では10MHzまでのインピーダンスの実部と虚部を検出する回路を新たに設計した。これらを統合したマルチモーダルのバイオCMOSチップを設計し、金電極のパターニング・ポリイミド絶縁膜形成・SU-8マイクロフルイド形成のポストCMOSプロセスの条件を定めた。以上によりバイオCMOSチップの汎用化・標準化が進み、安定なチップ供給体制が整い、バイオ関連研究室へのチップ供給を開始した。
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