内部拡散障壁を有する高密度高性能プラズマの閉じ込め特性を、LHD実験によって得られた成果から物理相似性によって自己燃焼プラズマへ外挿し、核融合炉における粒子供給シナリオの実現可能性を検討した。実験結果と整合したモデルによるシミュレーション計算の高度化を行い、在来型の高温低密度での制御熱核融合点火のシナリオとは異なった超高密度低温で点火を行うために必要な粒子供給条件を調べた。その結果、固体水素ペレット入射による粒子供給法を用いて、尖塔化密度分を持つ高密度自己燃焼プラズマを定常維持できる事を示した。このような尖塔化分布した高密度プラズマを用いた場合、平坦密度分布では15 keV必要であった中心温度を10 keVまで減少させ、より低温領域での自己燃焼プラズマの保持が可能であることを示した。更に自己燃焼プラズマの保持に最低限必要な核融合アルファ出力を1 GWから0.75 GWまで減少させることが可能となり、プラズマ対向材料への熱負荷低減等の工学的要求低減の可能性が示された。一方で、核融合出力の変動を抑制しつつ尖塔化密度分布を実現するためには、現在のペレット入射技術を大きく超える20 km/s以上の超高速入射が条件となり、ペレット入射技術の画期的な進展が求められる。 高密度運転シナリオ実現の要となるペレット粒子供給の素過程理解のために、ペレットの溶発と背景プラズマへの均質化動態を記述する理論モデルの構築と実験による検証を行った。ヘリカルプラズマでは、磁場構造の3次元性に起因してペレットの溶発により生じた高密度プラズモイド内の磁場勾配によるドリフトの向きが変化するため、プラズモイド内部の電場形成を抑制する電流が流れ、プラズモイドドリフトがほとんど見られない事を明らかにし、一般にヘリカルプラズマへ中心粒子供給するためには,プラズマコア部で直接ペレットを溶発させる事が重要であることを示した。
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