研究課題/領域番号 |
20227002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
七田 芳則 京都大学, 理学研究科, 教授 (60127090)
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研究分担者 |
今元 泰 京都大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (80263200)
山下 高廣 京都大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (50378535)
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キーワード | 視覚 / 視物質 / 機能多様性 / 分子メカニズム / マウスモデル |
研究概要 |
交付申請書に記載の実験計画に沿って、下記の実験を行った。 1.精製ロドプシンをナノディスクに組み込み、光反応過程をマイクロ秒の時間分解能を持つ微弱光測定装置を利用して測定した。その結果、Gタンパク質を活性化する状態の生成・崩壊の時定数が界面活性剤で可溶化した試料に比べて視細胞外節膜中での値に近くなった。また、錐体視物質をナノディスクに組み込むことにも成功した。 2.視細胞の暗ノイズの原因となる視物質の熱活性化を生化学的手法で観測することを試みた。その結果、視物質に由来する暗ノイズとそれらが活性化するGタンパク質へのGTP・Sの取り込み量に相関がみられることがわかった。 また、発色団の異性化を起こさないアナログを利用することにより、視物質の暗ノイズと分子のゆらぎを区別して測定する可能性が示唆された。なお、1分子観測法に比べて生化学的手法のほうがより早く目的に近づけることが明らかになってきた。 3.錐体視物質遺伝子をノックアウトしたマウスモデルの作製に成功した。また、マウス緑錐体視物質を桿体視細胞に異所的に発現するトランスジェニックマウスを作製し、作製済みのノックインマウスと掛け合わせることで、桿体視細胞に発現する錐体視物質の量の多いマウスをスクリーニングしている。 4.Opn5類の中でほ乳類には存在しないOpn5L2について、その反応性と細胞内局在を検討した。その結果、Opn5L2は光受容体として以外にレチナールをリガンドとするホルモン受容体として働く可能性が示唆された。また、脊椎動物の視物質と近縁な非視覚オプシンであるVALオプシン、パリエトプシンについて、その光反応性がそれぞれ異なることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初の研究計画に沿ってほぼ順調に進んでいる。実際、(1)錐体視物質(マウス緑)を含む桿体視細胞の光感受性に関する分子レベルの解析については、時間分解能の高い分光学的手法を利用して違いを測定することに成功し、(2)暗ノイズのin vitroでの測定に関しては、生化学的手法を用いて測定できることを確認した。また、(3)マウスモデルの作製は現在計画的に進めている。さらに、(4)オプシン類の分子特性の比較解析については、種々のオプシン類の分子特性の解析に成功し、また、これまで培養細胞系での発現が報告されていないかったOpn5について、世界で初めて成功し、それが紫外線受容体であることを発見した。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた研究計画は順調に進んでいる。今後は、当初の予定よりもさらに進んだ成果があがるよう努力する。視細胞の光感受性に関する研究では、測定精度をあげるためにナノディスクの利用を検討する。また、現在続けている行動実験が可能なマウスの作製に努力する。一方、オプシン類の多様化については、Opn5などの新規のオプシン類を含めたオプシン類の機能解析を進め、生物機能の多様性・進化の起因となる機能性タンパク質の機能変換の分子メカニズムの総合的理解をめざす。
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