研究概要 |
染色体DNAの複製開始領域には複数のタンパク質が、連続した2つの反応により結合する。まず、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)活性の低いM期後期からG1期にpre-RC(pre-Replicative Complex)が形成され、Gl/S境界域からCDKが活性化するとDNAポリメラーゼを含む一連の複製因子が集合する。pre-RC形成の過程の詳細はかなり明らかになってきているものの、CDK活性に依存した複製因子の集合がどのように起こり、どのように制御され、複製を開始させるのかは明らかではない。我々はCDK活性に依存した複製因子の集合に焦点をあて、本年度は以下の研究を行った。1)新規に見つけたSld3-Sld7複合体がダイマーとして存在している可能性が示唆された。そこで、沈降係数の測定等の詳細な解析を行い、ほぼ間違いなくダイマーであることを示した。2)CDK活性化によりpre-LC(pre-Loading Complex)が形成し、pre-LCはその後の複製因子の複製開始領域への結合に必須である。このpre-LCの形成にはPolεが必須である。Po1εは、触媒サブユニットPol2と他の3つのサブユニットDpb2,Dpb3,Dpb4からなる複合体であるが、GINSがDpb2に、Sld2がPol2に結合する。この際、Dpb2を少量しか含まないPolεを精製して調べたところ、pre-LC形成が抑えられていることが分かった。一方、種々の因子とPolεサブユニットとの融合タンパク質の解析を進め、Polεのpre-LC形成には触媒サブユニットのDNAポリメラーゼドメインを含まないC末領域が重要であることを示した。このC末領域には他のPolεサブユニットが結合する。3)精製タンパク質による再構成に加えて、粗抽出液を用いたin vitro複製系の準備を始めた。
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