研究課題/領域番号 |
20227008
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前田 雄一郎 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (10321811)
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研究分担者 |
成田 哲博 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (30360613)
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キーワード | アクチン / アクチンフィラメント / アクチンのトレッドミリング / 筋収縮のカルシウム調節 / トロポニン / 遺伝性心疾患 / X線繊維回折 / 高分解能構造解析 |
研究概要 |
平成20年度の研究の最大の成果はアクチン重合体の高分解能立体構造解明の研究成果を出版した点にある。1月にNature誌の短報として投稿したところ長い論文articleとして投稿し直すように指示を受け、同時に3名のreviewerから合計90項目におよぶ建設的な補強意見を受け取った。これを検討しつつ、ほとんどの計算をやり直し、議論の詳細も徹底的に再検討した。そして1年後の平成21年1月に出版となった。この論文執筆は単なる執筆ではなく密度の濃い創造の仕事であった。 この研究によって、アクチンの重合に伴って分子の形態が変化し捻れが除かれより平板化すること、この平板化と螺旋配置のために分子間の接触が可能となることが判明した。アクチンフィラメントの構造には前者の不安定化要素と後者の安定化要素が共存する。プロトフィラメント2本巻きの構造内にこの両要素を抱え込むことによってアクチンフィラメントは1本で機能する能力を獲得したと考えられる。 アクチンフィラメントP端のクライオ電子顕微鏡写真単粒子解析法による構造解析が進展し、P端の最先端のアクチン分子の“姿勢"が他と異なり、隣接分子とより強く接触していると考えられ、このためP端での重合と脱重合の速度がB端より遅いのであろうとの結論を得た(未発表)。 遺伝性心疾患の病因であるトロポニンの変異E244D、K247Rの解析を進め、この変異箇所を中心とした"Pair of triads"の特徴的な残基配置がトロポニンのみではなく、立体構造既知(PDB)の蛋白質17に共有されていることを解明した。これは今後"pair of triads"の意義を検討する場合の基礎的データとなる(未発表)。 最後に、ERATOプロジェクトの終了(21年3月末)を前に研究設備のほぼ全てと研究場所を兵庫県播磨のSPring-8構内から名古屋大学構内に移動し今後4年間の研究活動の拠点を構築した。
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