研究概要 |
アクチン線維の構造と動態の研究で、H23年度より取り組んできた新規課題で多くの進展があった(一部はH24年度中に論文として発表した)。(1)複合体の構造を解明する研究:アクチン/ コフィリン線維の電子顕微鏡構造解析では、単粒子解析法を用いて近原子分解能(4A程度)の構造が得られ、分子間のループ・ループ間接触の詳細の解明が可能となった。アクチン・トロポミオシン・トロポニン複合体の電子顕微鏡構造解析では、試料調製法と画像解析法の改良によってトロポミオシンとトロポニン分子の位置と形態が区別可能となった。(2)アクチン線維キャッピング蛋白質 (CP) の多層的調節メカニズムの研究では、2種のペプチド(CARMILペプチドと twinfilinのC36ペプチド) とCPの複合体の結晶構造を解明した。CPに前者が結合するとCPをアクチン線維から解離させるが、後者は解離させない。しかも双方のCPへの結合は拮抗的である。これは双方のCP上の結合部位が、共にCP/アクチン結合部位とは異なり(アロステリックであり)、互いに部分的に重複していることに因る。計算科学およびNMRの専門家と共同で、双方のペプチド結合がCPに異なる作用を及ぼす理由の探究を開始した。(3)細胞内のアクチン線維網目構造の解析: 細胞内では蛋白質相互間に働く力が希薄溶液であるin vitro条件とは異なる。よって細胞内のアクチン線維の構造解明は重要である。ウィーンのSmallたちと共同して電子顕微鏡トモグラフィー法とその写真解析法を確立し、細胞内葉状仮足を形成するアクチン重合体の極性を決定する方法を確立し、ほとんどの重合体がB端を膜に向けていることを確認した(2012, J.Mol.Biol)。またArp2/3複合体が形成するアクチン重合体分岐構造を同定し、その分布を明らかにした (2012, J.Cell Sci)。
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