研究課題
本研究は、脂質輸送型ABC蛋白質の生理的基質および作用機構を解明することを目的として行った。その結果、善玉コレステロール(HDL)形成の鍵を握るABCA1に関して、ABCA1の細胞外ドメインがATP加水分解にともなって構造変化をすること(JLR 2012)、構造変化によって血中の脂質アクセプターであるapoA-Iに対する結合部位が形成されること、ABCA1とapoA-Iの結合の第1段階が静電相互作用であることを明らかにした(BBA 2012)。次に、ABCA1の細胞膜上での動きを、蛍光全反射顕微鏡を用いて1分子レベルで観察し、不活性なABCA1が自由拡散運動するのに対し、野生型ABCA1の多くは細胞膜上で動かないこと、apoA-Iが結合するとABCA1は自由拡散を開始すること、静止した野生型ABCA1が二量体であることを明らかにし、新規HDL形成機構を提唱した(PNAS, 2013)。うつ病との関連が示唆されているABCA13の一塩基多型の機能への影響を明らかにし (BBB 2012)、ABCA1とABCG1の脳における重要な機能の一つがオキシステロール輸送であることを明らかにした(J. Neurochem 2013)。また、ヒトABCG1を精製し、輸送基質がスフィンゴミエリンとコレステロールであることを明らかにした(JLR 2013)。ABCA1の阻害剤の探索に成功し(BBA 2013a)、阻害剤の作用機構の比較および精製蛋白質の生化学的な比較によって、脂質輸送型ABC蛋白質と薬剤輸送型ABC蛋白質が共通のメカニズムで機能していることを明らかにした(BBA 2013b)。さらに、真核単細胞生物のABC蛋白質の結晶化によって、世界最高の分解能での構造解析に成功した。これによってABC蛋白質の基質認識・輸送機構を分子レベルでの解明が可能になった(投稿準備中)。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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