研究課題
過酸化脂質は食品油脂の酸化劣化として従来研究されていたが、ヒトの体内とくに生体膜脂質の過酸化が細胞老化、生活習慣病、老化性疾患に深く関与すると考え研究を展開してきた。本研究では、過酸化脂質の生成と疾病の関係を化学的定量的に究明することの重要性に着骨し、生体過酸化脂質の精密一斉網羅的構造解析、過酸化脂質分析法の改良と高選択な抗体作成による汎用化、細胞障害・疾病に関わる過酸化脂質の分子機構の解明、食品による過酸化脂質の生成制御と疾病予防、これらに関する下記6課題の解明を目的とした。(1) ビニルエーテル化合物による高純度で安定な過酸化脂質標準品の調製技術の改善と統一標準品の内外研究者への供給では、種々の脂質クラスのヒドロペルオキシド標準品の調製技術を開発した。(2) LC-MS/MSによる生体試料(ヒト血漿、赤血球、等)の全過酸化脂質の一斉網羅的構造解析による.分子種レベルでの構造全貌の解明と過酸化脂質データベースの充実では、LC-MS/MS法の解析条件の一層の最適化を行っている。(3) 臨床応用できる簡便で選択性の高いヒドロペルオキシド型過酸化脂質の免疫定量法の開発では、抗血清を得た。(4) 高脂血症、糖尿病、認知症における過酸化脂質の生理活性と関与分子機構の解明では、疾病モデル動物で過酸化脂質の生理活性と分子機構を評価している。(5) 高血糖下で発見されたアマドリ型糖化脂質の簡便な免疫定量法の開発と応用では、高選択性の抗体の選定を進めている。(6) 食品成分による過酸化脂質の生成と蓄積の制御による疾病予防の可能性の評価では、抗酸化物質トコトリエノールの抗血管新生阻害機能の解明と、食品キサントフィルの赤血球脂質過酸化抑制を介した認知症の進展の緩和作用を見出した。このように本研究は、計画通り順調に推移している。その成果は、過酸化脂質の化学生物学的特性の理解につながり、食品の新しい機能発見や疾病予防に役立つので、社会的意義と波及性が大きいといえる。
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