研究課題
「生体過酸化脂質と疾病の全貌解明」を目的に、下記の研究を進めた。(1)高純度脂質ヒドロペルオキシドを合成し、これを出発物質(原料)にして、還元物(脂質ヒドロキシド)やアルデヒドなどの分解物(酸化二次生成物)の高純度標品調製技術を確立した。(2)CL-HPLC法とLC-MS/MS法での生体試料(ヒト血漿、赤血球、等)の過酸化脂質の一斉分子種定量法を確立し、過酸化脂質データベースを構築中である。(3)臨床応用できる簡便で選択性の高いヒドロペルオキシド型過酸化脂質の免疫定量法の開発では、抗血清を得たものの、昨年度同様、高選択性な抗体は得られなかった。抗体作製については、運次第の面もあるため、引き続き挑戦し、ELISA法による簡便かつ選択性の高い過酸化脂質の免疫定量法の開発を目指す。(4)抗過酸化脂質抗体による細胞内過酸化脂質の可視化イメージング技術の開発では、(3)で抗体ができ次第、共焦点レーザー顕微鏡による高感度観察や、フローサイトメーターによる定量解析を行い、細胞レベルで過酸化脂質の生成蓄積部位の特定を試みる。(5)高脂血症、糖尿病、認知症における過酸化脂質の生理活性と関与分子機構の解明では今年度は、遺伝子ノックアウト動物(アポE欠損マウス)を用いて、脂質過酸化の亢進と動脈硬化の増悪化に関係解明を進めた。また、アテローム性動脈硬化症発症への関与メカニズムとしてPC-OOHがRac GTPaseを活性化しICAM-1への単球接着を亢進するメカニズムを明らかにした。(6)高血糖下で発見されたアマドリ型糖化脂質の簡便な免疫定量法の開発と応用ではアマドリ型糖化脂質に高選択性の抗体を獲得して、ホスファチジルイノシトールなどの類似化合物との交差反応性試験を進め、選択性の高い抗体を選び、ELISA法による簡便かつ選択性の高い免疫定量法を開発するための実験を継続して進めている
2: おおむね順調に進展している
震災により、分取用クロマト装置をはじめ多くの機器類が破損したため、とくに脂質ヒドロペルオキシド標品の精製ができなくなったが、機器を修理してほぼ解決することができた。また、疾病と血中PCOOH濃度の相関を検証する目的で、主に高脂質血症、高コレステロール血症、急性心不全の救急入院患者の大動脈血、糖尿病者の血液など、約700名からの臨床標本を得て分析に入る状態にあったが、地震により冷凍庫が破損・停電したため全て廃棄せざるを得なかった。これらについては改めて共同研究している臨床機関から血液標本を提供してもらい、当初目的の検証を研究期間内にほぼ完了することができた。
進めている研究課題の内、脂質ヒドロペルオキシドの抗体作成がまだ十分に進んでいないが、臨床応用できる簡便で選択性の高いヒドロペルオキシド型過酸化脂質の免疫定量法の開発を目指している。抗血清を得たものの、選択性性の高い抗体はまだ得られていない。上述のように抗体作製は運次第の面もあるため、来年度も挑戦し、ELISA法による簡便で選択性の高い免疫定量法の開発を継続している。
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