研究概要 |
水産動物として初めてトラフグの全ゲノムが解読されたことを受けて,その情報を有用形質育種に結びつける方策を探るのが本研究の目的であり,解析家系としてフグの種間交雑を利用しているのが大きな特徴である.本研究に必須の連鎖地図は全ゲノム配列の86%をカバーする詳細なものがほぼ完成しており,公開に向けた作業を進めているところである. 本年度は昨年度までの掛け合わせ世代における表現系解析実験個体のQTL解析と,新たな交雑世代を利用した表現系解析を実施した.寄生虫Heterobothrium okamotoiに強い感受性を示すトラフグと耐性を示すクサフグとの種間交雑F2に対する攻撃試験の結果,連鎖群9に強い相関がみられた他,他の領域とのエピスタシス効果も認められた.種間交雑F1とクサフグとの戻し交配を利用した攻撃試験も行ない,今後,QTL解析を進める予定である.体サイズの種間差を支配する遺伝子座も見出されており,現在遺伝子の特定をめざしている.脊椎骨数についても体サイズとは異なる遺伝子座が見出され,種間でサイズと脊椎骨数は相関するもののそれぞれ異なる遺伝子に支配されていることが分かった.トラフグが大胆,クサフグが臆病という行動の違いがあるが,給餌者への慣れやすさ,刺激に対する応答で異なる遺伝子座と共通する遺伝子座とにより支配されていることが明らかとなった.体表に細かい棘のあるクサフグと著しく退化したヒガンフグとのF2世代を解析した結果,有力な1遺伝子座が見出され,遺伝子候補が絞られてきた.これらの形質ごとに,マーカー選抜育種に向かうべきか遺伝子の特定にまで進めるかを判断し,一部の遺伝子については機能解析を進めているところである. 成熟に至るまでの期間短縮については水温など環境制御による催熟試験を行なって,1年を迎えようとするところである.外見から成熟度を判定し,最適な時期にホルモン投与を行なう予定である.
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