研究概要 |
トラフグのゲノムデータは,数千の断片配列のままであったが,ターゲットマップ法によりゲノム断片をつなぎ合わせた22本の染色体を再構築し,ゲノム地図を作成させ,Ensemblを通じて公開した(Fugu V5). 体サイズ,脊椎骨数,棘(鱗),行動様式,寄生虫耐性の発達について,顕著な差を持つ種間交雑第2世代(F2),戻し交配世代(BC)を用いて遺伝子の探索を続けた. 体サイズは116遺伝子に絞られているが,クサフグ卵への遺伝子導入に向けて,その領域をカバーするようバクテリア人工染色体の準備を整えた.脊椎骨数のクサフグとヒガンフグの種間差は,トラフグとクサフグで見られたゲノム上の3領域の内2領域が一致した.そのどちらかにクサフグの脊椎骨を減らす変異が,一致しない1領域にトラフグの脊椎骨を増やす領域があるものと推定された.棘については,ENU処理により棘発達が阻害されたクサフグ突然変異個体の作出に成功したことから,昨年度報告したゲノム領域との関係を解析中である.行動様式,寄生虫耐性については,新たに作出したF2家系が部分的に3倍体化している個体が多く,解析を断念した.寄生虫耐性には2領域が認められているが,クサフグ戻し交配個体から,一方がクサフグホモ,他方がクサフグ,トラフグのヘテロである個体を得ることができた,さらにクサフグとの掛け合わせを行い,領域の絞り込みを図っている.トラフグとクサフグの鰓において発現量の異なる遺伝子を探索したところ,寄生虫耐性に関わる1領域にある遺伝子が見いだされたことから,この遺伝子の機能に注目して解析を進めている.免疫関連遺伝子,特に鰓のケモカインとの関係についても検討中である. 本研究で性判別が可能となったことから,雌雄の1年魚に異なるホルモン処理を施し,早期催熟を図ったが,雄については成熟の兆候が認められた.関連してYY個体の作出に成功し,全雄技術確立に向けて飼育を継続した.
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