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2011 年度 実績報告書

ゲノム育種によりトラフグの優良品種作出をめざす

研究課題

研究課題/領域番号 20228003
研究機関東京大学

研究代表者

鈴木 譲  東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40107412)

キーワード遺伝育種 / トラフグ / ゲノム / 耐病性 / 体サイズ / 行動 / 棘 / 性決定
研究概要

ゲノム地図作製により,2010年7月にフグゲノムデータベースがFugu V5へとバージョンアップされたが,さらなる充実をはかって論文を完成させ,詳細なデータをすべて公開した.
体サイズ,脊椎骨数,棘(鱗),行動様式,寄生虫耐性の発達について,種間交雑第2世代(F2),戻し交配世代(BC)を用いて遺伝子の探索を続けた.クサフグ,トラフグのF1をクサフグと掛け合わせた戻し交配家系の中から,脊椎骨数に関する3領域の内,1領域のみクサフグ,トラフグのヘテロで,他の2領域はクサフグホモの個体からさらにクサフグに対する戻し交配家系を得ることができた.その結果,目的領域のLOD値が大きく上がり,その領域の脊椎骨数への関与が明確になった,棘,行動様式については,これまでとほぼ同じ領域にQTLが認められ,さらに領域を絞り込むことができた.
体サイズに関するQTLをカバーするトラフグのバクテリア人工染色体をクサフグ受精卵への遺伝子導入を試みたが,今のところ特に明確なサイズ差は認められず,引き続き検討することとした.
トラフグ鰓の寄生虫,Heterobothrium okamotoiがクサフグには寄生しないことから,両魚種における発現量の異なる分子を二次元電気泳動およびサブトラクション法で探索した.その結果,候補遺伝子としてトラフグ皮膚で見出されたパフレクチンがトラフグ鰓では発現しているのに対し,クサフグではほとんど発現していないことが分かった.パフレクチンはH,okamotoiに結合することが知られており,寄生成立の可否に関わっている可能性が高いことからさらなる検討を続ける予定である.
ホルモン処理によるトラフグ1年魚の催熟試験の結果,結果,サケ下垂体を投与した雄個体すべてが産卵期前にGSI2%以上にまで成熟が進み,1年魚の催熟が可能であることが証明された.関連して昨年度作出したYY個体から精子を得ることに成功し,全雄技術への道が大きく開かれた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トラフグ全ゲノム解析に関する論文を完成させたことで,データをすべて公開することができ,だれでも自由に利用できるようになった点,極めて大きな成果である.その一方,掛け合わせ実験は制約が大きく,たまたま質の悪い卵を使わざるを得なかったなど,期待をやや下回った,寄生虫耐性/感受性に関しては,トラフグとクサフグの鰓で発現する遺伝子やたんぱく質の違いを調べ,複数の候補分子が浮かび上がり,今後に期待がもたれる.性決定遺伝子については,機能面からのサポートデータが得られ,論文として投稿段階に至った.全雄技術については,YY個体からの精子が得られ,実用化に向けた最終段階に到達した.

今後の研究の推進方策

本研究の最終年度として,領域をさらに絞り込むことに留意して選抜個体間の掛け合わせを行なうことにより,遺伝子座の特定を進め,遺伝子の特定をめざす.寄生虫耐性/感受性に関しては,QTL解析の結果にトラフグ,クサフグ間での発現比較研究の結果を加えて責任遺伝子を絞り込み,機能面を明らかにして行く.性決定遺伝子に関連してYY雄から採取した精子を用いた受精卵を得ることにより全雄技術を確立させる.これらの研究を通じて,ゲノム情報を活用した育種研究のあり方を提言して行きたい.

  • 研究成果

    (24件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (21件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Integration of the Genetic Map and Genome Assembly of Fugu Facilitates Insights into Distinct Features of Genome Evolution in Teleosts and2011

    • 著者名/発表者名
      Kai, W., et al.
    • 雑誌名

      Genome Biol. Evol.

      巻: 3 ページ: 424-442

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Conservation of characteristics and functions of CD4 positive lymphocytes in a teleost fish. Dev. Comp. Immunol., 35, 650-6602011

    • 著者名/発表者名
      Toda, H., et al.
    • 雑誌名

      Dev.Comp.Immunol.

      巻: 35 ページ: 650-660

    • 査読あり
  • [学会発表] 近縁魚種間で脊椎骨数の差をもたらす遺伝子座22012

    • 著者名/発表者名
      合田知樹, ら
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-29
  • [学会発表] トラフグ属魚類の鱗形成の差をもたらす遺伝的要因の探索トラフグ属魚類の鱗形成の差をもたらす遺伝的要因の探索2012

    • 著者名/発表者名
      山野上祐介, ら
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-29
  • [学会発表] フグの行動QTL-2…2012

    • 著者名/発表者名
      細谷将
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-28
  • [学会発表] 様々な魚種で利用可能なマイクロサテライトマーカーの開発2012

    • 著者名/発表者名
      野澤碧, ら
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] トラフグの性決定遺伝子1-トラフグの性はおそらく一塩基で決定されている2012

    • 著者名/発表者名
      菊池潔, ら
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] トラフグの性決定遺伝子2-組換え・ヘミ接合・重複・発現-2012

    • 著者名/発表者名
      菊池潔, ら
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] トラフグの性決定遺伝子3-性決定遺伝子の誕生と死、あるいは遺存2012

    • 著者名/発表者名
      渥美九郁, ら
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] トラフグの性決定遺伝子4-HRM解析によるトラフグの性判別法の開発と性転換家系の解析2012

    • 著者名/発表者名
      家田梨櫻, ら
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] クサフグにおける性のゆらぎ2012

    • 著者名/発表者名
      田島祥太, ら
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      品川
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] トラフグのゲノム育種2011

    • 著者名/発表者名
      鈴木譲・菊池潔
    • 学会等名
      平成23年度日本水産学会秋季大会シンポジウム「フグ研究とトラフグ生産技術開発の最前線」
    • 発表場所
      長崎
    • 年月日
      2011-10-02
  • [学会発表] トラフグケモカイン受容体2011

    • 著者名/発表者名
      田内博久, ら
    • 学会等名
      平成23年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      長崎
    • 年月日
      2011-10-01
  • [学会発表] 近縁種間で脊椎骨数の差をもたらす遺伝子座2011

    • 著者名/発表者名
      合田知樹・細谷将・城夕香・菊池潔・鈴木譲
    • 学会等名
      平成23年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      長崎
    • 年月日
      2011-09-30
  • [学会発表] トラフグ性決定遺伝子座のファインマッピングと候補遺伝子の発現2011

    • 著者名/発表者名
      菊池潔, ら
    • 学会等名
      平成23年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      長崎
    • 年月日
      2011-09-30
  • [学会発表] フグの成熟期サイズQTL2011

    • 著者名/発表者名
      細谷将, ら
    • 学会等名
      平成23年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      長崎
    • 年月日
      2011-09-30
  • [学会発表] トラフグとクサフグは異なった性決定遺伝子をもつ2011

    • 著者名/発表者名
      田島祥太, ら
    • 学会等名
      平成23年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      長崎
    • 年月日
      2011-09-30
  • [学会発表] 寄生虫の宿主特異性に関わるフグ遺伝子の探索2011

    • 著者名/発表者名
      平林陽・木戸慎一・木南竜平・細谷将・甲斐渉・菊池潔・城夕香・末武弘章・良永知義・小川和夫・鈴木譲
    • 学会等名
      日本比較免疫学会第23回学術集会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011-08-22
  • [学会発表] トラフグ腎臓に存在する形質芽球用細胞2011

    • 著者名/発表者名
      小高智之, ら
    • 学会等名
      日本比較免疫学会第23回学術集会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011-08-21
  • [学会発表] フグにおける性決定遺伝子座の進化2011

    • 著者名/発表者名
      菊池潔, ら
    • 学会等名
      日本進化学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011-07-30
  • [学会発表] Genetic Basis of Parallel Evolution of Scale Loss in Takifugu Pufferfishes2011

    • 著者名/発表者名
      山野上祐介, ら
    • 学会等名
      日本進化学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011-07-30
  • [学会発表] Evolution of the Sex-Determining Loci in Fugu and Its Related Pufferfishes2011

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi, K., et al.
    • 学会等名
      Ann. Meeting Soc. Mol. Biol. Evol. 2011
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011-07-28
  • [学会発表] Genetic Basis of Parallel Evolution of Scale Loss in Takifugu pufferfishes2011

    • 著者名/発表者名
      Yamanoue, Y. Kai, W., Kuroyanagi, M., Hosoya, S., Suetake, H., Suzuki, Y., Kikuchi
    • 学会等名
      Ann. Meeting Soc. Mol. Biol. Evol. 2011
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011-07-28
  • [備考]

    • URL

      http://www.se.a.u-tokyo.ac.jp/japanese.html

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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