魚類として最初にトラフグの全ゲノムが解読されたことを受け,そのゲノム情報を利用して作製した詳細なゲノム地図と,トラフグとクサフグなどの種間交雑家系とを用いることにより,さあざまな有用形質を支配する遺伝子を特定し,有用遺伝子を持つ個体を効率よく選抜して行くゲノム育種の道筋をつけようとするのが本研究である.最終年度,新たな種間交雑家系を作成して連鎖解析を進めると共に,遺伝子発現解析,トランスジェニックなどを組み合わせて候補遺伝子の絞り込みをはかった. 脊椎骨数についてはこれまでのトラフグとクサフグ以外にヒガンフグとの交雑家系をを加えて解析した結果,脊椎骨数を決める遺伝子座は複数あるが,種によりその貢献度が異なることを明らかにした.淡水中で産卵するメフグとトラフグの交雑第2世代を作出し,孵化仔魚の淡水耐性に関わる連鎖解析を進めたところ,いくつかの遺伝子座が見いだされ,うち1つの領域からは有力な候補遺伝子が絞り込まれてきた. クサフグ,トラフグの鰓で発現量の異なる分子として有力な候補遺伝子が見いだされたが,ゲノム上の位置が特定できず,これまでの連鎖解析との関係を明らかにすることができなかった. トラフグとクサフグの連続戻し交雑家系を用いて,噛み合い行動と染色体伝達パターンの関係から噛み合い行動に関する遺伝子座の絞り込みを行なった結果,噛み合い行動を誘起する3つの遺伝子座を見出した. ほぼ明らかとなったトラフグの性決定遺伝子を,異なる性決定機構を持つクサフグ胚に導入したところ,トラフグ型の性が発現したことから,この遺伝子が性決定遺伝子であるとする考えが補強された.すでに作出に成功したYY個体から採精し,XX個からの卵と受精させたところ,調べた80個体すべてに精巣が確認され,全雄作出技術が完成した.現在精子の販売という実用化段階に至った.
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