研究課題
植物組織で前処理無しでの探針エレクトロスプレーイオン化法による質量分析を行い、計測に用いた植物組織をマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析で直接確認する作業を行ってきた。しかしこれまでMALDI質量分析で用いてきたマトリックス物質は分析感度が十分といえないため、もっとイオン化効率が高いマトリックスの開発を新たに取り組んだ。各種のナノパーティクルを使用することにより、感度高い分析が可能となった。このMALDI質量分析と探針エレクトロスプレーイオン化質量分析は補足的な関係にある。探針エレクトロスプレーイオン化質量分析では前処理を必要としないため、リアルタイムでの分析が可能である。ミオグロビン溶液のpHを変更することにより、タンパク質の立体構造を変化させる処理を行った。タンパク質の立体構造の変化は、アミノ酸の電荷の変化による解離と関連しているため、探針エレクトロスプレーイオン化における電荷の付加状態に変化が起こる。ミオグロビンの立体構造の変化と関連して起こる電荷付加の変化を秒単位で計測することに成功した。タンパク質を重水に入れると、タンパク質の立体構造においてもっとも外側に面して水分子と接している部分の水素原子が重水素原子に置き換えられる。重水素への置換は重水への移行処理後、時間とともに進行し、タンパク質の立体構造に依存して最も外側にどのようなアミノ酸が露出しているかによって置換速度が変化する。探針エレクトロスプレーイオン化法を用いることで、グラミシジンを重水に移行させた後、リアルタイムで前処理することなく重水置換の様子を計測することが可能となり、タンパク質でどの部位のアミノ酸がもっとも外側にあるのか、タンパク質の水溶液での立体構造の解析が可能となった。これらのことから、探針エレクトロスプレーイオン化質量分析によるリアルタイム分子計測法を確立することができた。
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