研究課題/領域番号 |
20228006
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内田 隆史 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (80312239)
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研究分担者 |
内田 千代子 茨城大学, 保健管理センター, 准教授 (80312776)
二井 勇人 東北大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (90447459)
日高 将文 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (00584848)
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キーワード | hGas7b / コンデショナルノックアウトマウス / motility assay / パクリタクセル / CAMKII / Pin1 / CREB / JNK |
研究概要 |
1)hGas7bコンデショナルノックアウトマウスの作製に成功した。本マウスをCAG-Creマウスと交配し全組織でhGas7bを欠損させた。現在、病理学的手法により表現型を解析している。hGas7bが高濃度ではキネシンの運動を阻害することをmotility assayで明らかにした(j biochem, in press)。また、hGas7bがタウのリピートドメイン3番に結合することを見出した。さらに結合場所の詳細を特定する研究を進めている。2)パクリタクセルの誘導体ライブラリーを探索し、微小管重合を促進するタクサン誘導体を見出した。この過程で、想定外だったが、重合阻害活性を有するタクサン誘導体まで発見した(BBB)。3)CAMKII分子内のPin1が結合するリン酸化Ser/Thr-Pro部位を決定するとともに、Pin1によりCamKII酵素活性が上昇することを明らかにした。CamKIIはタウのリン酸化や、シナプスのNMDA受容体のリン酸化にも関わる。このメカニズムから、Pin1のCAMKII活性の制御と認知症との関連について研究を発展させた。4)Pin1が糖尿病や肥満に、CREBの活性の制御をすることにより関与していることを明らかにし、この機構を利用し、Pin1阻害剤が肥満を抑制できることを示した(plos one)。CREBは学習記憶にも関係しており、CREBの活性をPin1が制御することは脳においても意味があると考えている。また、ストレス応答に様々な遺伝子の転写に関与するJNKの活性化にPin1が関与することも明らかにした(Cell Death Differ)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
hGas7bは微小管重合を促進するが、大量のhGas7bは微小管上のキネシンの運動を阻害するので、量は適切に制御されなければならない。hGas7b-KOマウスも解析中である。微小管重合調節薬剤もランダムなスクリーニングではヒットがないので、パクリタクセル誘導体群を作製し探索する方法に変え活性は弱いが興味深い化合物を発見した。新たなPin1のターゲットとして、脳に多量に存在するCamKIIキナーゼおよびCrebを発見した。Pin1は、これら分子を介して、学習記憶能にて関与していると推察される。
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今後の研究の推進方策 |
微小管重合の調節を行う分子として、リン酸化tauと結合するPin1やhGas7bについて研究しているが、tauのThr231-Pro部位のシス、トランス体に対する抗体がアルツハイマー病の診断治療に有用であるという論文がCell誌にでた。我々は、抗体でなくFRETを使いダイナミックな構造変化を観察することを考えている。また、リン酸化タウとその調節分子の複合体について3D構造も明らかにし、微小管重合促進の分子メカニズムを解明しようと思っている。この他、ノックアウトマウスはコンディショナルなので、脳のどの部位でGas7が機能を発揮しているのかについても解明していく。
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