平成24年度は、これまで開発してきたソフトLewis酸/ハードBronsted塩基協奏触媒系を用いる新規不斉触媒反応を駆使する医薬品の効率的不斉合成研究を中心に行った。チオアミドを用いる触媒的不斉ダイレクトアルドール反応の徹底的最適化を施し、現在世界で最も使用されている高脂血症薬であるatorvastatinの改良合成法を確立した。鍵反応に原子効率100%の触媒的不斉ダイレクトアルドール反応を用い、わずか6工程で共通中間体に誘導可能な合理的合成ルートを構築した。不斉アルドール反応に用いる高価な不斉配位子は回収可能で(91%)、コスト・工程数の両面で極めて実用性の高い合成ルートとなっており、Chem. Eur. J誌にvery important paperとして受理された。また、希土類金属/アミド配位子型触媒においては、Nd/Na型のanti-選択的触媒的不斉ニトロアルドール反応様触媒の高効率化を達成した。不均一触媒の特性を生かし、化学的に安定なカーボンナノチューブを固相支持体として利用する、微細ネットワーク分散型触媒の開発に成功した。固相担持により触媒活性が低下する例が多い中、本担持法では触媒が微細クラスターを形成し触媒活性の大幅な向上が見られた。本カーボンナノチューブ担持型触媒は、濾過操作で反応溶液と分離することで繰り返し使用可能である。本反応を抗高脂血症候補薬anacetrapibの迅速不斉合成に適用し実践的応用性も示した。
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