研究課題
ストレス応答は、細胞が持つ最も基本的な生命現象のひとつであり、その破綻は、炎症、がん、神経変性、自己免疫などをはじめとする多様な疾患の発症原因となる。シグナル伝達分子の多くは、ホルモンやサイトカインなどの生理活性物質のみならず物理化学的ストレスによってもその活性が制御されるが、ストレスセンサーの実体ならびにタンパク質によるストレス認識の構造的ならびに時空間的分子基盤については不明な点が多く残されている。本研究は、ストレス応答性キナーゼならびにフォスファターゼの機能解析を中心テーマとして推進し、酸化ストレス、小胞体ストレス、浸透圧ストレスなどの物理化学的ストレスが如何にしてリン酸化シグナルに変換され、またストレスシグナルが如何にして細胞機能を司るかという、基本的な生命現象の分子的実体の解明を目指す。本年度は、1.MEKK2活性の時間的制御におけるユビキチン-脱ユビキチン化の役割、2.線虫ならびにショウジョウバエを用いた遺伝学的アプローチ(スクリーニング)によるASKファミリーシグナルの解明、3.ASKファミリーの発がん過程における役割、4.新規脱リン酸化酵素PGAM5によるミトコンドリアストレス制御機構の解明、5.ASK3による浸透圧ストレス応答機構の解明、に焦点を絞って研究を展開し、それぞれの項目について、ストレスシグナルの新しい制御機構の解明に進展がみられた。
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