研究課題/領域番号 |
20229005
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
西川 伸一 独立行政法人理化学研究所, 幹細胞研究グループ, グループディレクター (60127115)
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研究分担者 |
錦織 千佳子 神戸大学, 大学院・医学研究科, 教授 (50198454)
宮崎 泰司 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40304943)
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キーワード | 骨髄異形成症候群 / DNAメチル化 / 5Azacytidine / CpG island / AML / メチローム解析 |
研究概要 |
現在脱メチル化療法の効果が明らかな骨髄異形成症候群(MDS)が特異性のない脱メチル化療法に反応するのかを、治療効果のあったMDS細胞のメチル化状態を調べ解明する事を目的とする。1)非特異的脱メチル化が特異的な効果を持ちうるのか?2)5AZ処理MDS細胞で変化が見られる遺伝子の同定、3)MDS関わる遺伝子の同定、に焦点を当てる。残念ながら、脱メチル化剤の我が国での認可が平成23年2月に大幅にずれ込んだため、進行は遅れたが、平成23年夏よりようやく患者さんの検体収集が始まり、現在治療効果が得られた患者さんの細胞が1検体、治療効果がなかった細胞が2例集まり、解析に着手できた。MDSモデル細胞を用いた1)については、インフォーマティックスに時間がかかったが、今回の研究で脱メチル化剤が遺伝子座特異的な効果を及ぼしている事が明らかになった。今回の研究で、1)5AZ処理が、全ての遺伝子領域で同じように作用するのではなく、CpG-islandについてはpromoter領域により強い選択性がある、2)5AZ処理により脱メチル化される遺伝子と発現が上がる遺伝子ではほとんど連関がなく、5AZの効果はプロモーター領域以外、あるいはCpG-island以外のメチル化領域を介している可能性があること、3)これまでMDS発症に関わる事が知られている遺伝子は5AZ処理によりほとんど変化しないこと、の3点が明らかになった。また、予後と関連のあるMPO発現が高いAML細胞を調べ、MPO発現とプロモーター領域のメチル化がほぼ一致する事を明らかにした。しかし、この遺伝子座は5AZにより脱メチル化される事はなかった。モデル細胞を用いた5AZ効果の解析、またAMLのメチル化の検討から、ようやく複雑なパズルを解く糸口が見えて来たと考えている。特に、どの遺伝子部位を患者さんの解析時に見ればよいかのヒントが得られた事は、最終年度の解析に大きな意味がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実際の患者さんの解析については、MDS治療への脱メチル化剤の認可が大幅に遅れ、実際に患者さんへの投与が始まったのが平成23年6月という状況になった事が大きい。そのため、平行して進めたAML患者さんの検体が十分集まったにもかかわらず、治療対象となりまたICがとれた患者さんがようやく3例集まったのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
MDSについては、モデル実験の結果を論文化すること。次に、集まった患者さんの検体のメチローム解析と、トランスクリプトーム解析を進め、モデル実験と比較しながらMDSに関係する可能性のある遺伝子を見つける事に全力を挙げる。一方、もう一つの疾患としてメチローム解析の対象としていた悪性黒色腫については、細胞を培養する方法が確立して来たので、同様にメチローム解析を進める。
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