I.上皮バリア感染戦略の解明:赤痢菌の上皮細胞感染に応答して細胞死が誘導される。赤痢菌の感染に応答する細胞死のシグナル経路を精査した結果、細胞死誘導シグナルはCaspase-4依存的でありCaspase-1には非依存的であった。Caspase-4は、赤痢菌の感染に応答して誘導されるER-ストレスの下流で活性化されていた。即ち、赤痢菌の感染ではER-ストレスの下流でCaspase-4が活性化される新規な細胞死応答が誘導されているごとが示唆された。赤痢菌から分泌されるOspC3はCaspase-4のサブユニットp19に特異的に結合性を示し、その結合依存的にCaspase-4の活性化が阻害された。本研究により、上皮細胞の細胞死が生体防御反応として感染に応答して誘導されること、および赤痢菌がOspC3を通じて細胞死を抑制していることが明らかになった。 II.細胞間バリア克服戦略の解明:GFP-赤痢菌を種々の上皮細胞へ感染させ菌の突起形成の局在をtime-lapse movieにより精査した。その結果、いずれの培養細胞においても80%以上の菌がtricellular junction(TCJ)から突起を形成し、TCJが菌により選択されていた。TCJに優先的に発現する細胞接着因子、Tricellulinをノックダウンした細胞では、TCJ形態は保持されているものの、TCJにおける菌による突起形成と菌の細胞間拡散能が低下した。赤痢菌の細胞間拡散では、TCJの形態とともにTricellulinの存在が菌の細胞間拡散に重要であることが明らかとなった。 III.免疫バリア回避戦略の解明:選択的オートファジーによる赤痢菌および他の侵入性細菌に対する認識機構を調べた。選択的オートファジーの開始に必須な因子としてTecpr1を同定した。Tecpr1はAtg5およびWIPI-2結合性を示し、この結合はオートファジーの開始に不可欠であった。赤痢菌では、Atg5-Tecpr1-WIPI2経路による菌の認識がオートファジー誘導のメカニズムであることが明らかとなった。
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