研究課題
セマフォリンファミリーは神経軸索に対して化学反発活性を発揮する分子群であるが、多くのメンバーが免疫反応の制御においても機能していることが明らかになりつつあり、セマフォリンとその受容体が自己免疫疾患、アレルギー疾患などの免疫病治療の分子標的となる可能性が出てきた。本研究はセマフォリン分子による免疫制御の全容解明と免疫病の標的治療への応用を目指して計画され、本年度は免疫病発症におけるクラス4型セマフォリンSema4Aの役割を解析した。我々のこれまでの研究から、Sema4AがTh1/Th2分化において重要な機能を果たしていることが明らかになっている。そこで、過剰なTh2型免疫反応によって引き起こされると考えられている気道アレルギーにおけるSema4Aの役割を解析した。卵白アルブミン(OVA)であらかじめ免疫したBALB/Cマウスに経鼻的にOVAを投与することにより気道の過敏性すなわち喘息用の症状を誘導することができる。OVA感作したSema4A欠損BALB/Cマウスに経鼻的にOVAでチャレンジしたところ、野生型マウスに比べより顕著な気道抵抗の上昇と肺コンプライアンスの低下が認められた。また、Sema4A欠損マウスの気管支肺胞洗浄液中の好酸球数、IL4濃度も野生型マウスに比べ有意に上昇しており、所属リンパ節中のT細胞によるIL4産生についてもSema4A欠損マウスでより亢進していた。さらに、感作した野生型マウスをOVAでチャレンジする時に、Sema4A-Fcタンパクを投与したところ、Th2反応の低下だけでなく気道過敏性の低下も認められた。以上の結果より、Sema4AはTh2型の気道アレルギーにおいて抑制的な機能を有することが明らかになった。この結果は、Sema4Aとその受容体がこれらの疾患の治療の分子標的となりうる可能性を示している。
すべて 2009 2008 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
J. Celin. Immunol., 29:1-11, 2009 29
ページ: 1-11
Int. Immunol., 20:695-708 20
ページ: 695-708
Immunity 28
ページ: 302-303
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/act/act_kikutani.php