研究課題/領域番号 |
20229007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊谷 仁 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80161412)
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研究分担者 |
安居 輝人 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (60283074)
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キーワード | セマフォリン / Sema4A / Tim-2 / Th2 / IL-4 / アレルギー疾患 / Akt |
研究概要 |
セマフォリンファミリーは神経軸策に対して化学反発活性を発揮する分子群であるが、多くのメンバーが免疫反応の制御においても機能していることが明らかになっており、セマフォリンとその受容体が自己免疫疾患やアレルギー疾患などの免疫病の発症や病態にも深く関与している可能性が考えられる。昨年度までに、Sema4A欠損マウスがアレルゲン誘導性の気道過敏性誘導に感受性であること、Sema4A-Fcの投与によりTh2サイトカインの抑制や気道炎症、気道過敏性の軽減を誘導できることなどから、Sema4Aが喘息などのアレルギー疾患において抑制的な機能を有することが明らかになった。本年度は、アレルゲン特異的なIL-4産生T細胞に対するSema4A-Fcの影響を解析し、Sema4AがIL-4産生T細胞に直接働きIL-4の産生を抑制している可能性を示した。また、Sema4Aの受容体の一つであるTim-2を欠損したマウスの気道過敏性をもSema4A-Fc投与で抑制できることから、Sema4Aによるアレルギー疾患抑制作用はTim-2以外の受容体を介していることが明らかとなった。昨年度までに、セマフォリン受容体の下流分子Rho GTPaseに結合することが知られているPKN1が全く新規の分子機構でB細胞受容体の下流でAktを抑制的に制御し高親和性B細胞の選択制御にかかわっていることを示した。本年度は、B細胞受容体シグナルを模倣してAkt活性を上昇させることが知られているEBウイルス産物LMP2aを胚中心特異的に発現するマウスを作成し、EBウイルス感染胚中心細胞がLMP2aを利用して抗原非依存性にメモリーB細胞に分化しうることを示し、EBウイルス潜伏感染機能の一端を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sema4AによるTh2反応抑制機構の解明に一定の進展があった。昨年度までに、セマフォリン受容体下流のシグナル解析のなかで、PKN1によるB細胞活性化の制御機構の発見という当初計画にない展開があったが、本年度もその研究を継続し、新たにEBウイルス産物LMP2aがB細胞の分化を修飾していることを示すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
Sema4Aの作用機構の解析をさらに進める。具体的には、アレルギー性皮膚炎のモデル等を用いて、Th2細胞のリンパ組織から炎症の場への移動におけるSema4Aの働きをSema4A欠損マウスやSema4A-Fcを用いて解析する。また、抗原刺激後のTh1細胞やTh2細胞初期活性化におけるSema4Aの関与を解析する。一方、PKN1やEBウイルス産物によるB細胞活性化・分化制御の解析等、当初計画にはない新たな展開が出てきたが、これらの知見の免疫学的重要性から、来年度も引き続き研究を継続する。
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