研究概要 |
本研究では、都市環境においてユビキタス通信機能を利用することで人や車の行動がどのように変化するかを迅速に予測・評価できるようにするため、十万ノード規模で人や車が移動する現実的な都市環境を構築し、ユビキタス通信機能を利用したネットワークシステムをできるだけ忠実且つ高速にシミュレーションするための技術開発を行う。今年度は、災害救難支援システムを対象としたシミュレーション環境の研究開発を行った。災害救難支援システムは、災害情報を避難者に与えることで避難効率を向上させることを目的としたシステムで、例えば、時々刻々と変化する災害状況に応じ、被災者毎に適切な避難経路を提供することができる。このようなシステムに対し提案シミュレーション環境を用いることで、災害地域,被災者の位置,通信状況など、様々な状況下でのシステムの効果を網羅的に評価できることを示した。また,無線ネットワークシミュレーションの高速化手法を考案した。この手法は、各ノードのトラフィックを確率分布としてモデル化し、その確率分布に基づきパケット送信タイミング、パケット受信成否を判断することで,MAC層に関わるシミュレーション処理負荷を1/10に削減する。また、ノード単位で従来の手法と提案手法とを切り替えて使用ことが可能で、使用できる計算機や評価目的に応じ、シミュレーションの精度と実行負荷を調整し柔軟にシミュレーションできることを示した。さらに、無線ネットワークにおけるノードモビリティについて、任意の密度分布を実現する手法の考案を行った。この研究では、地点間のユーザ数を全体で調整することで指定された密度分布を実現する。この地点間で移動するユリザ数を決定する問題を非線形計画問題として帰着し、さらに線形計画問題への近似を行うことで目的のモビリティモデルを導出する。これによりシミュレーション上で現実的なモビリティモデルを生成できることを示した。
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