研究概要 |
連想記憶モデルのアトラクター構造の可視化を行った.連想記憶モデルは脳の記憶のモデルであるが,情報理論で用いられているパリティー検査符号やCDMAとの数理的な対応がついているので,情報科学の描像の可視化の良いテストベッドである.本年度は特に,情報処理を失敗した状況に対応する偽記憶と呼ばれるアトラクターの分布を主成分分析により調べた.その結果,偽記憶が存在する部分空間は全空間に比例することがわかった.また,連想記憶モデルにシナプス抑制と呼ばれる機構を取り入れることで,偽記憶が不安定化して,リミットサイクルを形成することがわかった.そのリミットサイクルは二次元の空間に埋め込まれていることがわかった.これらの知見は,パリティー検査符合やCDMAにシナプス抑制を取り込むことで,情報処理の失敗を検出できる可能性を示している. SAT(充足可能性問題satisfiability problem)の可視化を行った.SATはNP完全問題に属し,計算機科学における典型的な問題の一つである.この系にレプリカ交換モンテカルロ法を適用し,その結果を主成分分析により可視化した.SATには解が容易に求められるeasy-SAT領域,解は存在するが解を求めるのが難しいhard-SAT領域,解が存在しないun-SAT領域が存在する.それぞれの領域について得られた主成分分析の結果は,画像としては全く異なっていた.今後は,レプリカ交換モンテカルロ法の結果を混合ベルヌーイ分布等でクラスタリングすることで,それぞれの領域のクラスター構造を推定することで,より人に優しいSATの可視化手法を開発する.
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今後の研究の推進方策 |
ARD法やLASSO法などのスパースモデリングと呼ばれる手法が近年盛んに研究それるようになってきた.スパースモデリングとは,このような基盤技術として提案されたモデル化/アルゴリズムの総称である.その基本的な考え方は,(1)実験研究者の仮説や実験意図が高次元空間のある部分空間に存在していると仮定し,(2)その部分空間から観測データを再構成できることと,部分空間の次元が小さい(スパースである)ことを同時に要請することで,(3)人手によらずに自動的に部分空間を抽出する枠組みである.スパースモデリングを,本研究に組み込むことにより,当初予定していた以上の成果が得られると予想している.
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