研究概要 |
前年度までに構築した、長期神経細胞培養、時間ダイナミクスの計測、空間ダイナミクスの計測の3つのシステムを用いて、同期バーストの発生に必要なニューロン及びネットワークのサイズに関する実験および解析を行った。 多電極アレイ上で、ラット胎児大脳皮質由来の培養ニューラルネットワークの同期発火の有無を計測後、免疫蛍光染色によりニューロンを識別することにより、同期活動に必要なニューロン数を計測した。実験データの解析によって、同期バーストの発生に必要最低限の初期密度がある事を明らかにした。研究成果の一部は、多電極アレイに関する最大規模の国際会議(MEA Meeting 2010、ドイツ、参加国数20,2010年7月)において発表され、数多くある候補の中から論文中の蛍光染色イメージの一つが"the most impressive image"としてProceedingの表紙に採択された。また、同期バーストに必要なネットワークの最小サイズに関する論文としてまとめられ(Neuroscience 171,50-61,2010.)、論文中の蛍光染色イメージの一つが、Neuroscience誌の表紙を飾った。 ニューロンの同期発火は認知・記憶・学習等の高次情報処理に強く関わっていることが示唆されているが、同期活動に必要なニューロン数は、生体内で計測することは不可能であり、本研究で構築した、時空間ダイナミクス計測システムで初めて実験的に可能となった研究である。 また、時間ダイナミクス(インパルス)計測システムによって得られた実験データをもとに、リターンマップによる時系列データ解析を進めた。その結果、ネットワーク発達期には、各ニューロンが異なる発火パターンを持つ複数の種類に分類できる可能性を見出し、同期バーストに至るネットワーク形成過程の理解につながると期待される。
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