当研究チームが開発したBilingual KWICを用いて中-英対訳の台湾法データベースの開発を中正大学と共同で推進し、暫定版が中正大学Taiwan LIIから公開された。韓-英対訳の韓国法データベースは、韓国政府法制処と共同で暫定版を構築した。このデータを基礎に、各国法の標準翻訳辞書の開発と比較法研究体制の構築準備を進めた。これにより、漢字文化圏の法概念を英訳を介して対比し、異同を検討するための基礎情報を充実させた。 戦後占領期に日本語官報と並行して刊行された英文官報は、日英対訳の法令情報を獲得する重要な資料である。その電子化を進め、画像情報をすでに公開した。現在、英文官報を検索可能な対訳文字情報とする作業を進めている。この作業の結果、法務省所管の日本法外国語訳データベースシステム搭載の標準翻訳辞書を充実させるデータの蓄積が可能となる。漢字文化圏の標準翻訳辞書構築の参考とするため、欧州連合の翻訳総局の多言語翻訳支援・管理システムの調査研究を行って多くの知見をえた。 当研究が主要対象としている対訳の法令データは、立法過程の最終生産物である。そこで、立法過程自体を情報技術的に処理する可能性(法令起案支援システムを含む)について研究し、法令データベースの利用支援に用いる基礎研究を推進した。 比較法研究には、法令データに加えて各種の関連情報を組み合わせる必要がある。日本法の基本概念は、外国法の翻訳を通して用意された歴史的な経緯を踏まえて、明治期の翻訳データ(フランスナポレオン民法典の翻訳、旧民法典の基礎となったボアソナード草案など)を電子化して、訳語の変化を追跡するための基礎研究を行った。ボアソナード草案の画像データはすでに公開した。また、旧民法から新民法に移行する段階の審議に関連する議事録情報なども法令の条文の理解に有益であるので、これらの情報を電子化し、条文に関連づける基礎研究を行った。
|