脳の情報統合機構として重要な働きを持ち、感覚から認知まで、普遍的な機能であるバインディングという重要な脳機能に注目し、特に高次認知と記憶に関する機能を解明するため、海馬領域におけるバインディングの脳イメージング研究を目指す。本研究の特徴である、バインディングの脳イメージング計測を可能とするEEGとMRIの同時記録実験系の改善を引き続き遂行した。GE製のMRI装置のTE時間精度のふらつきが原因となってノイズの削減が十分果たせないため、その軽減手法を、ハードウエアおよびソフトの両面からはかった。TRを用いたノイズ削減の他、EEG電極の改良、EEG電極設置手法を改良しローインピーダンス化などの改良を加えた。さらに、被験者の注意状況を把握・計測する、MRI内で動作可能な視覚トラッキング装置を組み込んだEEGとMRIの同時記録実験系を構築した。脳機能計測とパラレルに、解剖学な神経結合のデータをMRIを用いて取得するため、拡散テンソルMRI計測と解析を開始した。この基礎情報に基づき、従来開発した計算論的モデル構築を発展させ、海馬バインディングの脳認知科学モデル化を可能にした。 本年は着実な成果を積み上げ、またMRI実験も立ち上がりつつあったが、3月11日の東日本大震災の影響を受け、EEGとMRIの同時記録実験システムと、MRI解析用サーバに重大な損傷を受けた。MRI自体は損傷を免れたが、電力や研究予算の問題等があり、未だ正常なMRI実験ができない状態である。EEGとMRIの同時記録実験システム、MRI解析用サーバの早急な再構築が必要となった。
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