研究課題/領域番号 |
20240029
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
斎藤 哲一郎 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00202078)
|
研究分担者 |
室山 優子 千葉大学, 大学院・医学研究院, 特任講師 (20422248)
|
キーワード | 遺伝子 / 細胞・組織 / 神経科学 / 脳・神経 / 発生・分化 / 脊髄 / 小脳 / ホメオボックス |
研究概要 |
脊髄と小脳の発生における共通点を軸に、神経細胞の誕生から神経回路網の形成を制御する普遍的プログラムを解明すべく、神経細胞の分化で中心的な役割を果たすことを研究代表者等が発見したBar型ホメオボックス遺伝子のMbh1とMbh2の下流のカスケードを中心に研究を進めた。昨年度までの研究により、Mbh1やMbh2の下流では、LIM型ホメオボックス遺伝子Lhx2の転写が誘導されることを明らかにしたが、今年度の研究によりLhx2と同時にLhx9の転写も誘導されることを示した。さらに、Lhx2の誘導にはMbh1もしくはMbh2の一方のみで十分であるのに対し、Lhx9の誘導にはMbh1やMbh2以外の因子も必要であることを初めて明らかにした。また、Lhx2とLhx9は同一ファミリーの類似のタンパク質であるが、Lhx2が交連神経マーカーのTag1やRoboの阻害因子として軸索の方向を制御するRig1の転写を誘導できるのに対し、Lhx9はこれらの遺伝子の転写を誘導できないことを示し、Lhx2とLhx9には機能上の差異があり、Mbh1やMbh2の下流のホメオボックス遺伝子のカスケードは単に重複しているわけではないことを明らかにした。同時に、ゲノムDNA上のLhx2とLhx9の周囲には、種間で保存され遺伝子の発現制御に関わると考えられる塩基配列が多数存在することも明らかにした。一方、交連神経の軸索を底板へ誘引するネトリンの受容体Dccの発現は、Mbh1やMbh2の下流で翻訳レベルで調節されることを初めて示した。以上の結果、脊髄の交連神経回路を構築する過程では、複数のカスケードが平行に機能するとともに、転写と翻訳の制御を時間的に巧みに使い分けていることが明らかとなった。
|