研究課題
かねてから蛋白質リン酸化酵素であるCaMKIIはシナプス後部に多量に有る事が知られており、その存在量から、CaMKIIは単なるシグナル分子としてでだけではなく、何らかの構造的役割が有るのではないかと示唆されてきた。これまで我々はこの考えを追求し、CaMKIIがアクチンを束化する活性がある事、また自己リン酸化反応を行うと束化能が失われる事を見いだした。本研究では、海馬シナプスの構造可塑性とCaMKII、アクチン、コフィリンとの関連を調べた。まず、我々は束化能を消失に関連するCaMKII上の自己リン酸化部位を特定することに成功した。この部位をアラニンに置換させるとCaMKIIはアクチンから離脱しなくなる。この状態では、アクチンが安定化され、コフィリンやゲルゾリン、Arp2/3といったアクチン結合蛋白質との相互作用が抑制される事が判った。同じアラニン置換体CaMKIIを海馬ニューロンに発現し、シナプス構造可塑性を観察したところ、構造可塑性が抑えられている事が判った。一方、コフィリンがシナプス可塑性に伴い、急速にシナプスに移行し、それがCaMKII抑制剤のKN-93で部分的に抑えられた。以上の観察から、CaMKIIの一つの役割は、刺激されていないシナプスではアクチンを安定化させ、シナプスが刺激されCa^<2+>が細胞内に流入するとアクチンを脱束化し、コフィリンなどによるアクチン線維の再構成を引き起こすのではないかと考えられた。この意味で、CaMKIIは構造可塑性のゲートとして機能しているのではないかと考えられた。
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Cold Spring Harbor Protoc
巻: doi:10.1101/pdb.prot5406(online publication only)
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