研究課題/領域番号 |
20240037
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 教授 (90206839)
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研究分担者 |
譚 春鳳 新潟大学, 脳研究所, 助教 (40447610)
豊島 靖子 新潟大学, 脳研究所, 助教 (20334675)
小野寺 理 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (20303167)
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 / 臨床病理 / 免疫組織化学 / 封人体 / 人口呼吸 |
研究概要 |
本年度は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)におけるTDP-43異常と臨床病理について、多くの剖検例を対象とした免疫組織化学的検討を行った。 1.臨床病理学的に孤発性ALSと診断された35症例(人工呼吸器使用有;ARS^+、無;ARS^-、使用例は10年以上生存)を対象に、抗TDP-43抗体を用いた免疫組織化学的検討を行った。その観察結果は、孤発性ALSは広汎な部位の神経細胞及びグリア細胞の胞体内にTDP-43の異常蓄積を認めるプロテイノパチーであることを示していた。統計学上、TDP-43陽性神経細胞胞体内封入体の分布は2つの型に分けられた。1型は脳幹・脊髄中心型、2型は脳幹・脊髄に加え、大脳にも広汎に分布する型であった。ARS^-およびARS^+のいずれの症例も同じ1あるいは2型に分類され、2型は認知症と有意な相関を示した。 2.下位運動ニューロン症状のみを認め、長期間生存し得た孤発性ALSの5例を対象に、同様の免疫組織化学的検討を行った。通常の孤発性ALS群に比し、これらの症例ではTDP-43陽性神経細胞内封入体の数は明らかに少なく、その分布も限局性であった。また、アストロサイトと思われるグリア細胞内における異常TDP-43の蓄積は通常のALSより目立ち、とくに変性の強い脊髄前角において著明であった。このような臨床型のALSは、TDP-43の動態から見ても通常のALSとは異なっていた。 以上、ALSはTDP-43を指標とした場合、多系統変性症であり、病理学的には2つの型に分類可能であること、また、その病理型は、人工呼吸器による長期生存の影響を受けないことが示された。さらに、ALSには、TDP-43異常が軽度で、臨床経過の長い亜型の存在が明らかとなった。 これらの研究は、今後のALSの基礎と臨床を考える上で、極めて重要な知見を提供したといえる。
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