研究課題
基盤研究(A)
てんかん患者は全人口の1~2%と推定されている。てんかんを原因によって分類すると、その約8割は原因不明な「特発性てんかん」と言われており、残りは、脳の外傷、腫瘍、脳形成異常、変性疾患などによる脳の器質的な病変に起因する「症候性てんかん」である。臨床では一部に外科的手術もなされるが、主には、てんかん発作を抑制する薬による対症療法がなされている。多くの場合、抗てんかん薬を長期間服用し続けざるを得ないので、患者は副作用、妊娠・出産の不安、社会生活の制限など深刻な問題を抱えている。それゆえ、副作用のない優れた抗てんかん薬の開発および根治的な治療法の開発が強く求められている。この究極の目標を達成するには、臨床研究に加えて、遺伝と環境を厳格に統御できるラットを用いたてんかん研究が必須である。強直間代発作(GTC)を自然発症するてんかんモデルラットNERは、脳に器質的な病変がなく、未知の複数の遺伝子変異の関与が推定されている。よって、NERは、ラットにおける「特発性てんかん」として位置づけられる。また、「特発性てんかん」や頭痛に関与する遺伝子の一つとして、ナトリウムチャネル遺伝子SCN1Aの変異が取り上げられている。この中には、熱性けいれんプラスの患者にSCN1Aのチャネルポア構造部位をコードしている領域にアミノ酸置換を伴う変異が見つけられている。我々は、これとほぼ同じ部位に同様のアミノ酸置換変異をもつラットを、ENU誘発突然変異個体群の遺伝子スクリーニングから樹立した。本研究の目的は、1)NERにおけるGTCに関与する複数の原因遺伝子を明らかにすること、また、2)F344にNERのてんかん感受性遺伝子とScn1a遺伝子変異を共に導入して、自発性のGTC が生じるかどうかを調べることから、ラットモデルにおけるてんかん発作の遺伝素因を明らかにし、ヒトのてんかんの予防と治療に新たな切り口を提示することにある。
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