研究概要 |
●相転移温度が異なる6種類の脂質二重膜をシェルとする微小気泡(バブルリポソーム)を作成した.また,その動特性を気泡懸濁液の音圧依存性減衰の測定により評価し,ソノポレーションに最適な膜組成の決定に関する指針を得た. ●大きさの異なる2種類の気泡(ミクロンオーダ,サブミクロンオーダ)を用いたソノポレーションによって生じる膜損傷を光顕と電顕で観察し,細胞膜損傷の程度が気泡の大きさに依存して増大することを確認した.また,気泡が細胞に接触した状態では,従来ソノポレーション効率が高いとされていた比較的大きな造影剤気泡(例えばOptison,約5μm)が細胞に致死的な損傷をもたらすことを確認した. ●血栓とヒト前立腺がん細胞を対象とするターゲット気泡を開発し,標的とする細胞にのみ選択的に付着することを培養細胞を用いて確認した.本研究で提案しているソノポレーション手法では気泡が接触する気泡にのみ効果が得られるため,このことの重要性は高い. ●これまで我々が検討に用いてきた前立腺がん細胞(PC-3)は,抗がん剤が効きにくい種類であることが判明したので,細胞を前立腺がん細胞(LNCaP)に変更することとし,我々の実験に向けた培養法を確立した. ●ソノポレーション後最大24時間に渡って細胞を生かしたまま連続観察できる観察用チャンバを開発し,抗がん剤によるアポトーシスの発生状況の長時間連続観察手法を確立した. ●光ピンセットの光ビームを2本用いることにより直径3-5μm程度の気泡を捕捉,移動できることを確認し,ソノポレーションを行った.その結果,この大きさでは,細胞に致死的な損傷を与える頻度が高いことが確認された.今後より小さな気泡の捕捉を目指した検討を行う.
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