研究課題/領域番号 |
20241001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
綿貫 豊 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (40192819)
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研究分担者 |
佐藤 克文 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50300695)
高橋 晃周 国立極地研究所, 准教授 (40413918)
岡 奈理子 (財)山階鳥類研究所, 主任研究員 (30203962)
高田 秀重 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (70187970)
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キーワード | 海洋生態系変動 / 海洋汚染 / バイオロギング / 国際研究者交流(カナダ) |
研究概要 |
本研究は、海鳥の移動軌跡とその汚染度の地図をつかって、高次動物と生態系との相互作用の強度の高い場所、ホットスポットを定義することを目的とする。今年度は以下の3点を実施した。まず、新潟県粟島、岩手県タブの大島、山口県宇和島、および沖縄県仲の神島の4カ所で繁殖するオオミズナギドリの採食海域を明らかにした上で、尾腺ワックスのPOPsを分析した。これらの結果から、瀬戸内海の宇和島ではPCBが、東シナ海に近い仲の神島ではDDTの濃度が高く、日本海で採食する粟島個体ではHCHの濃度が高いことがわかった。これは、汚染物質の放出源、拡散と分解によって説明ができそうである。また、粟島において、産卵前後、長距離トリップで北海道太平湯沿岸で採食した場合と短距離トリップで日本回で採食した場合とでの短期的な変化を調べた。その結果短期変化はあるものの、島間の変異の方が大きかった。つぎに、昨年度にひきつづき、タスマニアで繁殖中のハシボソミズナギドリにジオロケーターを装着し、今年度回収し、体組織サンプルも得た。繁殖期にはオーストラリアから南極大陸沿岸部で採食し、北日本を含む太平洋北西部あるいは東部ペーリング海のいずれかで越冬することが、再度確認された。さらに、皮下脂肪のPOPsと脂肪酸組成、および羽毛の安定同位対比比の分析から、東西間の効果に加え、魚食性が強いほどPOPs濃度が高い傾向があることがわかった。また、移動軌跡の分析とその海洋環境との関係を解析した。3つ目として、ひきつづきおこなっている世界各地で採取された海鳥の尾腺ワックスの分析を終了し、論文にまとめた。これらの成果は、日本鳥学会大会、日本生態学会大会、PICES(北太平洋海洋研究者会議)年次会合、太平洋海鳥会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繁殖期、越冬期とも、オオミズナギドリのサンプル・行動データを十分な数得ており、分析をほぼ終了し、論文作成にとりかかっている。また、オオミズナギドリ繁殖地の多くの地域の比較を行ってその差の原因について考察できたのは期待以上であった。これまで収集してきた、他のテーマで現場調査をおこなっている研究者のよって提供されたサンプルの分析を終了し、これによって世界の海鳥の汚染度についてまとめることができた。測定値の評価を含め慎重に化学分析をすすめている。ハシボソミズナギドリの調査を、別のテーマの一環としても、さらに進め、その組織サンプルの分析を終了した。市民向けの講演会で講演し、また多くの学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年天売島においてウトウに装着したジオロケーターの回収を行うとともに組織標本を採取する(綿貫)。さらに、これらのサンプル、およびこれまで分析し切れていない分のサンプルの汚染物質、安定同位対比、脂肪酸組成を分析する(高田)。また、飼育実験で得られたサンプルの分析とその結果とりまとめを行う。さらに、ハワイ諸島で採取された海鳥をつかい、プラスチック取り込みの多い種類と、それがない種類とで脂肪中のPOPsの分析を行い、プラスチック由来のPOPs取り込みについて研究する。高橋、佐藤、岡はこれまでのデータを元に、海鳥の移動軌跡、採食行動についての成果とりまとめを行う。全体のとりまとめとして、2012年10月に広島で開催される北太平洋海洋研究者会議PICESにおいて、Session6 Spatial patt erns of anthropogenic stressors : predators as sentinels of marine ecosystem health (Convenors : Peter Ross (Canada), Yutaka Watanuki (Japan), Hideshige Takada (Japan)をおこない、成果論文をまとめ今後の展開について議論する。
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