細胞の紫外線照射に伴って一過性に誘導されるXPCのポリユビキチン化の意義と脱ユビキチン化機構を詳しく解析する目的で、ヒト正常線維芽細胞を親株としてDDB2を安定に過剰発現することにより、XPCのユビキチン化の増強が見られる細胞株を樹立した。この細胞を用いて、PSMD14以外の脱ユビキチン化酵素がXPCの脱ユビキチン化に関わる可能性をsiRNAライブラリを用いて検討したが、単独でXPCの脱ユビキチン化を遅延させるものは特に見出されなかった。この細胞でPSMD14をノックダウンしたところ、紫外線非照射時においてもXPCのユビキチン化が低レベルながら観察され、また紫外線照射後のDDB2の分解が遅延することがわかった。一方、精製タンパク質を用いてXPCのSUMO化反応をin vitroで再構成することに成功した。XPCにはSUMO化コンセンサス配列に合致するリジン残基が複数か所存在するが、これらのリジンをさまざまな組み合わせでアルギニンに置換した変異XPCタンパク質をバキュロウイルス発現系を用いて発現・精製したものを、in vitro SUMO化反応系に加えて検討した。その結果、少なくともXPCのN末端近傍の3か所のリジン残基がSUMO化されうることが明らかになった。そこで内在性のXPCを発現していないXP4PASV細胞を親株として、この3か所のリジンをアルギニンに置換した3KR変異体を生理的レベルで安定に発現する細胞株を樹立した。野生型XPCを発現するコントロール細胞と比較して、この3KR変異体を発現する細胞株は紫外線感受性の点では特に異常を示さなかった。しかしながら、紫外線照射後の(6-4)光産物の修復速度を測定したところ、野生型XPCを発現する細胞に比べて有意な修復の遅延が認められた。この細胞におけるXPCのユビキチン化、および修復の異常について詳しい解析を進めている。
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