昨年度までにin vitro SUMO化反応系を用い、XPCタンパク質の少なくとも3か所のリジン残基がSUMO化を受けることを明らかにし、これらのリジンをアルギニンで置換したXPC 3KR変異体を安定に発現するヒト細胞株を樹立した。この細胞株に紫外線を照射したところユビキチン化によるバンドシフトが観察されたことから、ユビキチン化はSUMO化とは異なる部位で起こるものと考えられた。一方、XPCユビキチン化の経時変化を詳しく調べたところ、野生型XPCと比較して3KR変異体は紫外線照射後のユビキチン化のピークが遅れ、かつユビキチン化がより長く持続する傾向が認められた。それに対して、XPC 3KR変異体のN末端にSUMO-1を融合したタンパク質を安定発現する細胞株を作成したところ、ユビキチン化のパターンは野生型XPCと同様であったが、興味深いことに野生型XPCのN末端にSUMO-1を癒合すると紫外線照射後に出現するユビキチン化XPCの消朱は野生型よりもむしろ促進されるように見受けられた。すなわちXPCタンパク質におけるユビキチン化とSUMO化は修飾部位こそ異なるものの、SUMO化がユビキチン化(あるいは脱ユビキチン化)に対して何らかの制御機能を有することが示唆された。現在、野生型XPCとXPC 3KR変異体、およびそれぞれのSUMO-1融合体を安定発現する細胞株を用いて紫外線照射後のヌクレオチド除去修復活性、チェックポイントやアポトーシス誘導などの細胞応答の解析を進めると共に、SUMO化XPCと特異的に相互作用する因子の探索を開始している。
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