研究概要 |
本年度は親電子性環境物質のリスク軽減因子に関する研究を中心に行った。得られた結果を下記に示す。 メチル水銀:植物由来のNrf2活性化剤であるブロッコリースプラウト成分スルフォラファンおよびワサビ成分6-HITC前処置によるメチル水銀曝露による細胞内水銀の蓄積および毒性の軽減効果をマウス初代肝細胞およびマウス個体で調べた。その結果、これらNrf2活性化剤の前処置によりメチル水銀曝露で生じる細胞内水銀量および細胞毒性は共に低下した。マウスにメチル水銀(5mg/kg/8days)経口投与時に観察される急性中毒症状と致死効果は、Nrf2欠損により顕著に上昇した。一方、スルフォラファンを野生型マウスに前処置すると、メチル水銀による急性中毒症状と致死効果は有意に抑制された。 多環芳香族炭化水素キノン体:我々は大気中親電子物質として、1,2-ナフトキノン(1,2-NQ)だけでなく1,4-NQの存在を明らかにしている。そこで、1,4-NQを特異的に認識するポリクローナル抗体を作成した。すなわち、1,4-NQをヘモシアニンに共有結合させたハプテンをウサギに感作させた。感作6ヶ月目に1,4-NQを特異的に認識する抗体が作成できた。本抗体を用いたウエスタンブロット分析を行った結果、1,4-NQと共有結合する細胞内タンパク質が観察された。 2,4,6-トリニトロトルエン(TNT):TNTをマウス初代肝細胞に曝露すると、濃度依存的な細胞死が観察された。同様な条件下において、明確なNrf2活性化は見られなかったが、Nrf2制御タンパク質であるHO-Iが誘導された。Nrf2の欠損によりTNT細胞毒性は顕著に増加したが、抗酸化タンパク質であるPrx1欠損では野生型と細胞毒性の差異は観察されなかった。
|